2018年よりMoto-GPでライダー用エアバックシステム義務化

2018年1月11日、世界最高峰のバイクレース「Moto-GP」は、2018年シーズンよりMoto-GP、Moto-2、Moto-3の全てのカテゴリーでライダー用エアバック着用を義務化すると発表しました

一般ライダーにはエアバックは馴染みが低く普及していない装備ですが、Moto-GPではライダー用エアバックの普及と、バイク業界全体での安全性向上を目指しています。

エアバックシステムの安全性と一般ライダーに普及する可能性は?

すでにMoto-GPクラスのトップライダーは、ライダー用エアバックを着用しています。しかし、ロレンソなど一部のストイックなライダーは、重量がおよそ1kg重くなることを嫌ってライダー用エアバックを装着していませんでした。

2018年シーズンより、全クラスでエアバックを付けないことは許されなくなりますが、既に大半のライダーはエアバック着用しているため、大きな影響は出ないでしょう。例外として、ワイルドカード参戦ライダーは着用を免除されるほか、代役参戦ライダーについては初めの2戦のみ着用が免除されます。

ライダー用エアバックは、レーシングスーツとセットでフルオーダーによって作られて、世界選手権クラス(Moto-GP)以外のレースでは、費用もネックになって普及していません。ワイルドカードや代役の免除はコスト面の問題や、オーダーメイドでレーシングスーツをイチから作る時間の問題もあります。

ライダー用エアバックシステムとは

ライダー用エアバックシステムはライダー用レーシングスーツの中に内蔵したエアバックが、転倒時の衝撃で自動的に膨らんで、怪我のしやすい部位を転倒による衝撃や後続バイクからの追突時に保護します。

エアバックシステムでは肩や鎖骨を中心とする部位の保護を中心にして、任意で背面の保護を選択可能にしています。Moto-GPでは規定のバッテリー容量や、動作時間に適合するものでMoto-GPによるテストを通過ことも求められています。

車用エアバックとの違い

車用エアバックは車体に衝突感知センサーを取り付け、電源を車のバッテリーから取って、走行中は常にエアバックの作動できる環境を維持しています。

バイクの場合は、転倒によってライダーがマシンから放り出されることが頻繁にあるので、車体とエアバックは独立したものにする必要があり、車体から電源を取ったり配線、センサーを車体に付けるのはNGです。そのため、ライダー用エアバックシステムは付属のバッテリーから電源を取り、使う度にエアバック用バッテリーを充電しておく必要があります。

また、センサーの誤操作(転倒していないのにエアバックが開く)の衝撃でライダーを転倒させてしまう恐れもありますので、必要なときにエアバックシステムを作動させ、転倒時に瞬時に膨らんでライダーを保護する必要があるため、車用エアバックよりも高い技術を求められます。

ツーリング用エアバックは一般向けにも登場している

ツーリング向けのエアバックシステム内蔵ジャケットや、インナーシステムは既に個人向け商品も多数登場しています。価格はジャケット内蔵型で6万円前後、ジャケットの下に着用するインナータイプで4万円前後です。

ツーリング向け商品は首や背中、胸など幅広い部位を保護するタイプが多く、ツーリング時の安全性を格段に向上させます。

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一般向け商品では、ガスボンベと大型センサーを使ったタイプの商品が主流で、重く、かさばり、動作時間が遅いデメリットがあります。最近では、アルパインスターズレースで開発した技術を市販品にフィードバックして、レーシングスーツと併用できてスピーディーな作動を期待できる商品も登場しています。

Moto-GPでのエアバックシステム義務化によって、一般向けのライダー用エアバックシステムの性能は今後も進化していくでしょう。

ただし、ツーリングジャケットやレーシングスーツと組み合わせる必要があり、街乗りなど私服でバイクを乗る際には着用できません。公道で全てのバイクにエアバックシステムを義務化するには時間がかかり、技術面でも多くの課題があります。

ライダー用エアバックシステムはどのくらい安全?

Moto-GPで使われるエアバックシステムは、肩や鎖骨の骨折を予防する効果が高いです。トップライダーは転倒によって骨折するケースが多く、トップライダーでも10回以上の骨折歴を持っている方が多数います。完全な予防効果はないですが、非装着に比べて劇的に安全性は向上します。

以前は転倒で脊髄を損傷して下半身麻痺になる事故も多数ありましたが、最近は脊髄パットやコブ(レーシングスーツの背中にあるクッション)によって、脊髄損傷リスクは軽減されています。エアバックシステムの背中への装着が任意になったのは、既存の安全装備の性能向上も関係しています。

死亡事故リスクの軽減については、エアバックシステム非装着に比べれば、安全性は向上するものの、効果は限定的です。Moto-GPをはじめ、バイクレースでの死亡事故の大半は首からのダメージです。後続車に首を踏まれたり、ハイサイドで飛ばされて地面に落ちた時や壁への衝突で首を強打して、首の骨を骨折するものが多いです。

Moto-GPに義務付けられるエアバックシステムは首の保護は付いていません。レースではコーナリングの体重移動で激しく動き、曲がりたい方向に顔を向ける必要があるため、首にエアバックシステムを付けるとライディングに支障の出る問題があります。

今後は、小型化や動作時間、動作条件の改良によって首の保護までできるように改善していく必要があります。

一般向けのツーリング用エアバックシステムの安全性

安全性能だけで見れば、大型で首まで保護できる商品も多い一般向けのエアバックシステムは、Moto-GPで使われるエアバックシステムに比べても安全性は高いです。現時点では、動作時間の遅い問題もありますが、今後向上していくでしょう。

自損事故における骨折や死亡事故リスクは大幅に軽減されます。しかし、公道におけるバイク死亡事故の大半は、対車によるものです。対向車や後続車に轢かれたり、衝突されるとエアバックシステムで命を守るにも限界があります。

エアバックシステム非装着に比べれば、大幅に死亡事故へ発展するリスクは軽減できますが、公道はサーキット以上に死亡事故のリスクが高く、エアバックを付けていれば安心できるものではありません。

おわりに

世界最高峰のレースでエアバックシステムを義務化する取り組みは素晴らしいことです。近年はABSをはじめ電子制御を搭載した大衆車も増えて、バイクの安全性能は向上しています。しかし、転倒や事故が起こった際にマシンでライダーを保護するには限界があり、将来的にはヘルメットと並んでバイクの安全装備として定着する可能性があります。

現時点では、価格やエアバックシステム作動の精度、大きさなど課題も多いですが、今後はどんどん良いエアバックシステムが登場していくでしょう。

個人向け商品は安いものでも3万円以上しますが、命を守れると考えれば安いものです。性能の進化や価格の下落を待つのではなく、早めに導入することをオススメします。バイク乗りの方は用途を問わず、エアバックシステムの導入を検討してみてください。

Moto-GPの舞台では、エアバックシステムによって骨折や死亡事故が減少して、モータースポーツの危険なイメージを払拭してもらいたいです。近い将来は、SBKや全日本ロードレース選手権でもエアバックシステムの義務化が広まっていくでしょう。

さらにアマチュアの草レースでもエアバックシステムの義務化が行われるなど、どんどん普及していく装備になると予想しています。

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