東京MCS 2018で2社から聞き比べた最新バッテリー事情

バイク用バッテリーは鉛バッテリーが主流ですが、最近では一部の車種で、純正リチウムイオンバッテリーを採用する車種も出ています。

東京モーターサイクルショー2018では、複数のブースでバイク始動用リチウムイオンバッテリーや、その他の次世代バッテリーの展示をしていました。

東京モーターサイクルショー2018で、Hondaの純正バッテリーの供給も始めた「エリーパワー」さんと、プロセレクトバッテリーの卸売を行っているバイク用品メーカーの「SHAD」さんから話を伺ってきました。

バッテリーを変えるだけで1kgの軽量化も!!

リチウムイオンバッテリーは、ハイブリッドカーに搭載される駆動用バッテリーでは広く普及していますが、今後はバイクの始動用バッテリーとしての普及も見込めるようです。従来の鉛バッテリーに比べて、リチウムイオンバッテリーは軽量・コンパクトになるので、バイク用バッテリーとの相性が良いです。

展示ブースでは、バッテリーを持ち比べて体感できるコーナーを用意していましたが、本当に1kg以上の重量差を体感できて驚きました。

鉛バッテリーに比べて寿命も1.5〜2倍になるようですが、価格は2.2倍前後するので、鉛バッテリーの方がコストパフォーマンスは高いです。今後、リチウムイオンバッテリーやその他の次世代バッテリーが普及すれば、価格も下がっていく可能性はあります。

現状では価格の高さがネックになって、軽量化を重視する一部の上位モデルにのみ採用されています。スポーツバイクやオフロードバイクは、1kgの軽量化でも走りに影響が出るので、軽量化カスタムを目的にバッテリー交換する需要は高まっていくでしょう。

エリーパワー(ELllY Power)への取材レポート


(参考URL:http://eliiypower.co.jp/products/motorcycle/hybattery.html)

エリーパワーはHondaの量販市販車にも採用されている、「HYバッテリー」を作っているメーカーです。
以下の車種にリチウムイオンバッテリーのHYバッテリーを採用されています。

・CBR1000RR-SP/SP2(2017年モデル)
・CRF1000Lアフリカツイン(2018年モデルより新採用)
・CRF450R・RX/CRF250R(競技専用車両、2018年モデルより新採用)

HYバッテリーは従来の鉛バッテリーと互換性の高いのが特徴です。ただし、初期充電やバッテリー上がり時の外部充電は、専用充電器を使わないといけません。ホンダの純正バイクに採用されたことで、正規ディーラーによるサポートを期待できます。

国内工場で生産している純国産なので信頼性は高く、大手メーカーに純正採用されたことで、今後大きな成長を見込めるリチウムイオンバッテリーメーカーです。

バイクの始動用バッテリーとしてリチウムイオンバッテリーを使うには、安全性、低温時のエンジン始動性能、低温時の充電による劣化が課題でした。HYバッテリーは独自技術によって克服して、ー10度の低温時にも安定した始動力を確保しています。

ホンダに採用されたのは、始動用バッテリーとして十分な性能を認められた証拠で、今後も採用車種の拡充やホンダ以外の車種への採用を目指すようです。

プロセレクトバッテリーを扱うSHAD(シェド)への取材レポート

プロセレクトバッテリーは、国産バイクの純正採用実績はなく普及率は低いですが、ECOリチウムイオンバッテリーのほか、ナノジェルバッテリーも得意にしていて、海外で実績豊富なバッテリーです。
プロセレクトバッテリーの展示を行っていたSHADのスタッフからは、世界と日本のバッテリー事情について色々と教えてもらえました。

プロセレクトバッテリーのラインナップは以下の3タイプを用意しています。

・ナノ・ジェル(充放電の少なく超寿命で横置きにも対応)
・ECOリチウムイオン(高スペックのリチウムイオンバッテリー)
・スタンダート(従来からある鉛バッテリー)

このほか、振動に強いハーレー専用AGMバッテリーシリーズ(ベース構造はスタンダートバッテリー)の用意もあります。

展示していたバッテリーは原付バイク用の小型タイプで、エリーパワーさんの展示していた大型バイク用バッテリーよりも小さいのですが、ECOリチウムイオンバッテリーは驚くほど軽かったです。鉛バッテリーと持ち比べた時の印象は、エリーパワーのリチウムイオンバッテリーを持った時よりも衝撃が大きかったです。

ナノ・ジェルバッテリーの重量は、鉛バッテリーとリチウムイオンバッテリーの中間くらい。寿命の長さと価格のバランスが強みで海外では広く普及しているそうです。価格はスタンダートバッテリー(鉛バッテリー)の原付用が3,000円とした場合で、ナノ・ジェルバッテリーは5,000円くらい、ECOリチウムバッテリーは8,000円くらいと説明がありました。

日本はバッテリーの分野で遅れている

SHADのスタッフによる話では、最新大型バイクの流通する先進国では、日本は海外よりも圧倒的に次世代バッテリーの普及が遅れているそうです。欧州のスーパースポーツはリチウムイオンバッテリーを採用されているところも多く、カスタムでの需要もあります。

日本は、始動用バッテリーにリチウムイオンバッテリーに変えると、軽量化効果を得られることを理解していない人が多いです。日本人はコストパフォーマンスを重視するので、リチウムイオンバッテリーやジェルバッテリーは価格を見て敬遠される傾向が強いそうです。

また、初期充電に専用機器を使うこともネックになるとのことです。プロセレクトであれば、携帯用でスマホ充電にも使える軽量ジャンプスターターの用意もあるので、同時購入をオススメしているとのこと。

私は、ミッションバイクであれば出先のトラブルでも押しがけで対処できるので、「車よりもバイクの方が相性は良いのでは?」と聞いてみましたが、バイクの方がコスパを重視する傾向は強く普及は遅れていると返答されました。

ナノ・ジェルバッテリーであれば超寿命なので、長期的に見れば鉛バッテリーとコストパフォーマンスに大差はなく、どこか国産大手メーカーに採用されれば一気に普及すると思うし、それだけの商品力を持っているとのことでした。

横置きもできて鉛バッテリーより小型化できるので、純正採用されればバイクのデザインも幅を広げられます。

おわりに

バイク始動用のリチウムイオンバッテリーを実際に持ち比べて、純正バッテリーの2倍ちょっとの価格差であれば、利用する価値は大きいと感じました。ただ、私のこれまで買ったバッテリーを思い返すと、いつもヤフオクで台湾ユアサの安いバッテリーを買っていて、SHADスタッフの話にあった通り、価格重視で選んでいました。

ちなみに私が過去に所有していたNSR50は、バッテリーレスキットを装着していました。友人の持っていたNSR250Rに関しては、バッテリーレスキットに加えてキックも排除して押しがけ専用仕様にしていました。

古いスポーツバイクは、発電に負荷をかけないようなカスタムが中心です。最近のリッタークラス・スパースポーツやロードレースの高年式モデルは、電子制御技術も使っているのでバッテリーを付けるのが一般的になっています。

やはり、ポイントになるのは価格面です。普及して今より割安な水準にならないと交換時に選択肢へ入れにくいです。バッテリー国内最大手のGSユアサも、2018年にはハンガリーにリチウムイオンバッテリー専用の工場を作ると発表しました。

少しずつではありますが、普及率は上昇して価格も下がっていくと予想します。鉛バッテリーと同等の水準までいかなくても、1.5倍の価格くらいまで下がってくれれば幅広い車種に普及されるでしょう。

ちなみに、バイクの重量は重心の低い部分の軽量化ほど効果は大きくなります。ホイール、スイングアーム、シャーシを1kg軽量化するのに比べると、バッテリー1kg軽量化の効果は低いですが、シート下やタンクの下側にあるパーツなので、ライダーのお腹の贅肉を1kg落とすより効果は大きいです。

1kgであれば走って効果を実感できるほどの差はありませんが、長期的に見た時の燃費や複合コーナーの切り返し時に違いを実感できるでしょう。リチウムイオンバッテリーやジェルバッテリーが、スクーターやストリートバイクまで幅広く普及する日が早く来ることを願っています。

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