待望のYZF-R1ベースのストリートファイター「MT-10」の魅力
近年ヤマハが躍進した原動力になったのが「MTシリーズ」です。低価格で扱いやすさを重視したMTー07、3気筒エンジンを搭載したオールラウンダーのMT-09といった大型バイクで実績を残し、MT-25、MT-03とラインナップを広げています。
2017年5月16日にシリーズのフラッグシップモデルになるMT-10が発売されました。弟分のMT-07(2気筒)、MT-09(3気筒)とは全く異なるYZF-R1のエンジンをベースにした直列4気筒160PSのエンジンを搭載しています。最強のストリートファイターと言えるでしょう。
MTシリーズ初のSPを投入
MT-10では「標準」と「SP」の2つのグレードが用意されました。
SPの変更点は以下の通りです。
・フロントオーリンズ製電子制御サスペンション(標準はKYB製倒立フォーク)
・リアオーリンズ製電子制御サスペンション(標準はKYB製ボトムリンク式モノクロスサスペンション
・新作フルカラーTFT液晶メーター(標準は新作LCDメーター(モノクロ)
・新作左右ハンドルスイッチ(ホイールスイッチ搭載)
・アルカンターラ調シート
・スイングアーム、バフ仕上げ
SPと標準の価格差は32万4千円で、電子制御サスペンションのコストが大半を占めています。足回りはホイールスイッチで簡単にセッティング変更可能で、ツーリングから街乗り、サーキットまで用途を問わず最適なセッティングで走れます。
標準グレードにも走行モード切替、トラクションコントロール、電子制御スロットルが標準装備され、充実の電子制御でハイパワーマシンでも扱いやすさを兼ね備えています。10年前は160馬力のバイクは化物扱いで初心者が手を出せる次元ではなかったですが、電子制御技術の進化で誰にでも乗りこなせるようになりました。大幅にパワーアップを遂げた2015年モデルの現行YZFーR1をベースに、本格ストリートファイターを市販車として発売できたのは、電子制御技術の恩恵があってこそです。
丁寧に造りこんだヤマハ本気の1台
スーパースポーツベースのストリートファイターと聞くと、ただエンジン出力を下げて、カウルを削ぎ落としたような簡単な造りの車種が多いです。MT-10は一目見てYZFーR1とは違う雰囲気を感じる個性豊かなヘッドライトをはじめ、専用設計した部品も多数あります。
R1のスポーティーでパワフルなフィーリングを残しつつ、街乗りや中低速域でのワインディングのために安定感を向上させていて、サイドカウル&アンダーカウルがないにも関わらず、YZFーR1より重量が10kg(SPは12kg)増えています。
そのほか、ホイールベースの変更などバーハンドルのポジションを最適化するために細部までこだわりを持って造りこんでいます。YZF-R1ベースにしながら、ヤマハの売れ筋バイクのMTシリーズの冠をつけた背景には、単なるYZF-R1の廉価版ではないメーカーの自信とプライドがあるからでしょう。
公道で走る価値のあるスペック
MTー10はYZFーR1と共通のエンジンを採用していますが、圧縮率を下げて中低速域の安定性を向上させています。最高出力は200PSのYZF-R1に対して20%ダウンの160PSに抑えられています。それでも、公道では不必要と言えるハイパワーで、電子制御が付いていて扱いやすさがあるとはいえ、パワーの持ち腐れと言えるオーバースペックです。
実際にエンジンの性能を公道で100%発揮するのは困難ですが、決して無意味なスペックではないと私は思います。まず、長距離ツーリングや北海道のキャンプツーリングの話を聞くと、意外なほどYZF-R1にテントを積んで長旅している人が多いです。たまたま私の周囲だけで起こっている現象かもしれないですが、YZF-R1とGSX-R1000は長距離ツアラーが多いです。
現行モデルの電子制御がついたスーパースポーツであれば、街乗りやツーリングでもストレスは少ないですし、馬力やトルクはピークまで使い切ることが全てではありません。仮にエンジンを5千回転以下までしか回さなかったとしても、エンジンを回せば性格が変わるようなバイクは中低速域でもフィーリングの違いを実感できます。
さらに、バイクは所有する優越感も重要なポイントだと思います。YZF-R1譲りの160馬力のエンジンを搭載しているというだけで、ほかのストリートファイター乗りに勝った気分になれるでしょう。バイク乗りは馬力やスタイリングにこだわる方が多いです。電子制御装備の品質向上で、乗り手の腕を問わずハイスペックマシンのバイクに乗る魅力が高まっています。
MT-10のスペック
車種名 | MT-10 ABS |
---|---|
排気量 | 1,036cc |
新車価格 | 1,674,000円/1,998,000円(SP) |
発売時期 | 2017年5月 |
エンジン形式 | 水冷4サイク直列4気筒/DOHC4バルブ |
燃費 | 国土交通省届出値23.4km/L (60 km/h) 2名乗車時 |
トランスミッション形式 | 6段リターン |
クラッチ形式 | 湿式多板 |
燃料供給方式 | フューエルインジェクション |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
乾燥重量 | 210kg |
乗車定員 | 2名 |
最高出力 | 118kW(160PS)/11,500rpm |
最大トルク | 111N・m(11.3kgf・m)/9,000rpm |
まとめ
すでに成功しているMTシリーズで、YZF-R1をベースにした新型バイクの条件であれば、YZF-R1ルックのフロントマスクにすれば手堅く売れたと思います。MT-10はあえてYZF-R1や既存のMTシリーズのデザインにとらわれず、新しくて個性が強い攻めたデザインを投入したことには、男気を感じました。現在、もっとも勢いのあるバイクメーカーでありながら、攻めの姿勢を変えないところがヤマハが成功している要因だと思います。
YZF-R1をベースにして電子制御が充実しているだけで、性能が高いのは分かりきっていることです。YZF-R1の大手並行輸入業者販売価格が226万8千円なので、電子制御サスペンションがないにしても標準グレードで167万円の価格設定はリーズナブルで購入する価値があります。
デザイン性やポジションに独自性を出して造りこんだことで、YZF-R1ベースのストリートファイター仕様を待っていたファンの期待を上回る新型バイクになったことでしょう。出力は抑えられたとはいえ、160馬力でYZF-R1と同等のポテンシャルを秘めたエンジンのバイクを国内正規仕様で購入できるので安心感とお手軽感が高いです。

この記事を書いたのはライターのブルさん。
ベテランライダー。大型バイクから原二スクーターまで5台のバイクを乗り継いできた経験だけでなく、数々のツーリング経験、サーキット経験などバイクに関する豊富な経験を持つ。自動車業界に勤めていた経験もあり。
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