アレックス・リンスの経歴、特徴、エピソード
アレックス・リンスは、2017年チームスズキ・エクスターよりMoto-GPデビューした次世代ライダーです。これまで世界選手権での年間チャンピオン経験はありませんが、走り方が綺麗で、着順以上に素材を感じられるライダーということで、ファクトリーチームのスズキからMoto-GPに昇格しました。
2017年シーズンは骨折で5戦欠場したこともあり、ポイントランキング16位、表彰台なしと苦戦しましたが、最終戦では4位入賞を遂げて来期への成長を期待させる内容でシーズンを終えました。
まだサーキットによって得意不得意もあり、バイクの乗り方は上手でも、シーズンを通してレースを勝ち抜く方法や、Moto-GPマシンの力を最大限発揮した乗り方は試行錯誤している様子でした。
2017年シーズン終了後に22歳になった、現役ファクトリーライダーの中では最年少です。Moto-GPデビューイヤーは厳しい結果になりましたが、今後の成長と活躍に期待です。
※2018年1月4日現在
氏名 | アレックス・リンス・ナバーロ(Alex Rins Navarro) |
---|---|
所属チーム | チームスズキ・エクスター |
生年月日 | 1995年12月8日(22歳) |
出身地 | スペイン・カタルーニャ州 |
主な実績 | Moto-2年間最高ランキング2位、Moto-3年間最高ランキング3位 |
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Moto-GP青木拓磨氏が絶賛する逸材だった
Moto-GP放送を行う、日テレG+(ジータス)の解説でお馴染みの元GPライダー青木拓磨氏は、Motoー3時代からリンスの走りは綺麗で上手いと絶賛していました。元GPライダーは負けず嫌いなので、Moto-GPクラスのトップライダーであっても、なかなか現役ライダーを褒めません。
青木拓磨氏も滅多にライダーを褒める人ではありませんが、リンスに関しては乗り方が綺麗だとベタ褒めを繰り返してきました。実際にMoto-GPのファクトリーチームに抜擢されたので、同じことを思っていたチーム関係者も多かったのでしょう。
ちなみに青木拓磨氏が日テレジータスの実況でよく褒めていたライダーはリンスのほかに、スズキからヤマハへ移籍して活躍したビニャーレスです。
ライディングスタイル
急ブレーキ・急発進をしない、お手本通りの走り方で、猛プッシュをせずに綺麗にまとめて走るライダーです。現役ライダーの中では、リンスと同様2017年にMoto-GPデビューしたヨハン・ザルコと似ています。
しかし年齢で見ても5歳の差があり、下積みの長かったザルコの場合は転倒も少なく、タイヤの消耗も少ない走り方をしています。リンスは、他のライダーに迷惑をかけるプッシュをしないクリーンなライダーですが、転倒も多くタイヤマネジメントもザルコほどうまくありません。
発展途上のスズキのマシンを乗っている関係もありますが、ライディングフォームは完成されていても、レースの走り方はまだ発展途上だと言えます。精神的にも未熟な面があり、熱くなることはいですが臆病でレース前に神経質になってしまうと本人も口にしています。
たしかに、いつも決勝レース前は神経質な表情を浮かべています。レースの駆け引きと、気持ちに余裕を持ってレースに臨める精神力があれば、大きな飛躍を遂げられる可能性があります。
これまでの経歴・エピソード
2011年にスペイン選手権125ccクラスのチャンピオンを獲得して、2012年よりMoto3クラスで世界選手権デビューします。1年目は表彰台1回、ポールポジション1回の2位でした。
なお、ポールポジションを獲得したのは、デビュー2戦目スペイン・ヘレスサーキットです。スペインは世界的にGPライダーの多い国でヘレスサーキットは若手を含めてホームコースにして練習するライダーが多数いることで有名です。激戦区エリアのサーキットで、タイムを出すと一気にMoto-GP関係者の注目を集めるコースです。
リンスはMoto-3デビュー2戦目で、いきなりヘレスでポールポジションを獲得して大きな話題を集めます。Moto-3では年間5位、2位、3位と安定した結果を出し、2015年にMoto-2に昇格するといきなり年間ランキング2位に入ります。2016年も3位と安定した成績を収め、スズキよりMoto-GP昇格を決めます。
Moto-2デビューした2015年は年間ランキング2位につけますが、チャンピオンになったのは獲得ポイントのMoto-2記録を更新したヨハン・ザルコで、ポイント差は大きく年間チャンピオン争いをするだけの成績ではありません。
数字だけを見ると、ファクトリーチームを走るライダーの中では物足りない印象もありますが、数字以上に走りからセンスを感じられるライダーのため、1年目からファクトリーチームのライダーに抜擢されることになります。
スズキもチームとともに成長していける若手有望株を探していたので、センスの高いリンスは求める条件にマッチした人材だったのでしょう。Moto-GPに昇格したデビューイヤーは骨折による5戦欠場の影響もありましたが、後半にかけてチームとともに調子を上げていました。
当サイトでは、順当に行けば2018年シーズンは年間ランキング8位以内を狙える存在だと評価しています。
レプソル・ホンダには行かないと明言
Moto-3時代には、アレックス・マルケス(マルク・マルケスの弟)とチームメートになり、マルケスのサポートをさせられるようになったことから、チームやマネージャーともめることになります。2014年までマネージャーを務めていたエミリオ・アルサモラ氏は、マルケス兄弟のマネージャーも兼務していてアレックス・マルケスをヒイキしたことでリンスとは決別して犬猿の仲になってしまいます。
リンスは将来活躍してもレプソル・ホンダに行くことはないと明言しています。レプソル・ホンダには、マルク・マルケスのマネージャーを務めるエミリオ・アルサモラ氏が出入りしているためです。仮にリンスが現役最強ライダーとして認められるようになって、レプソルホンダが獲得に動いた場合は、マルケス兄弟かリンスのどちらかしか取れないことになります。
ヤマハには元スズキのビニャーレスのほか、サテライトチームにヨハン・ザルコも控えているので、今後のキャリアアップはドゥカティが現実的だと、当サイトは独自に予想しています。しかしライディングスタイルを見ると、ドゥカティよりもヤマハの方が相性は良いです。理想的な形はスズキがトップチームと互角以上の走りをできるチームに成長することです。
スポーツ万能で多彩な趣味
学生時代からスポーツ万能で知られ、自転車、水泳、ジェットスキー、ラケットボール、カヌーなど、冬はクロスカントリースキーとインラインスケートをこなし、何をやらせても人よりうまくこなせる天才肌です。ジム通いも積極的で、脱ぐと綺麗な肉体美を持っています。
バイクでは、モトクロスやダートトラックでのトレーニングも欠かさず行っていて、屋外で身体を動かすことが好きなので、オフのトレーニングも意欲的に取り組んでいます。
WGP・MOTO-GPでの年間成績
シーズン | クラス | チーム | マシン | 優勝回数 | ランキング |
---|---|---|---|---|---|
2012年 | Moto-3 | Estrella Galicia 0,0 | スッター・MMX3 | 0回 | 5位 |
2013年 | Moto-3 | Estrella Galicia 0,0 | KTM RC250GP | 6回 | 2位 |
2014年 | Moto-3 | Estrella Galicia 0,0 | ホンダ・NSF250RW | 2回 | 3位 |
2015年 | Moto-2 | ポンス・レーシング・ジュニアチーム | カレックス・Moto2 2015 | 2回 | 2位 |
2016年 | Moto-2 | パヒナス・アマリリャス HP 40 | カレックス・Moto2 2016 | 2回 | 3位 |
2017年 | Moto-GP | チームスズキ・エクスター | スズキ・GSX-RR | 0回 | 16位 |
おわりに
リンスはMoto-3時代に、マルク・マルケスの弟でもあるアレックス・マルケスと長年チームメイトでした。当時のマネージャーをはじめ、チームはマルケス弟をヒイキして、結局リンスはチームとマネージャーの双方と決別することになります。
アレックス・マルケスとはMoto-2に昇格した年も同じでしたが、Moto-2になってからマルケス弟とリンスで明暗が大きく別れることになります。マルケス弟は未だにMoto-2で苦しんでいる中で、リンスはファクトリーチームとしてMoto-GPに参戦しているのは皮肉な結果にも感じます。
現在の地位を見ると、若手時代のリンスは被害者の立場で必要以上に苦労していたことになります。現在も発展途上のスズキに在籍して、決して有利な環境ではないですが、近い将来にもっとスポットライトを浴びることのできる存在になってもらいたいです。

この記事を書いたのはライターのブルさん。
ベテランライダー。大型バイクから原二スクーターまで5台のバイクを乗り継いできた経験だけでなく、数々のツーリング経験、サーキット経験などバイクに関する豊富な経験を持つ。自動車業界に勤めていた経験もあり。
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