ダニ・ペドロサの経歴、特徴、エピソード
※2017年12月13日現在
氏名 | ダニ・ペドロサ(Daniel “Dani” Pedrosa Ramal) |
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所属チーム | レプソル・ホンダ |
生年月日 | 1985年9月29日(32歳) |
出身地 | スペイン・カタルーニャ州 |
主な実績 | WGP250ccクラス年間チャンピオン2回、WGP125ccクラス年間チャンピオン1回、Moto-GP年間ランキング2位2回・3位3回 |
ダニ・ペドロサは、WGP参戦以降ホンダ一筋の中堅ライダーです。身長158cm 体重51kgの小柄な体格ながら、Moto-GP昇格4戦目の中国GPで初優勝を飾り、当時はスペンサーに次ぐ2番目の若さでMoto-GP優勝を成し遂げました(現在は現役チャンピオンのマルケスが最年少優勝記録を保持)。
Moto-GP昇格前はWGP250ccクラスで2年連続チャンピオンに輝いた実績を持ち、当時はロッシがヤマハへ移籍して、ホンダは2年連続でライダーチャンピオンから遠ざかっている中で、黄金ルーキーとしてワークスチームのライダーシートを用意した経緯があります。
2006年にMoto-GP参戦以降、2017年シーズンまで12年連続で優勝を記録していますが、年間チャンピオンは獲得できていません。年間チャンピオンを獲得していないライダーの中で、実績を見ると歴代最強クラスだと言えます。
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度重なる怪我に悩まされた
現在のペドロサの立ち位置はマルケスに次ぐチーム2番手のライダーですが、Moto-GP参戦2年目の2007年から2012年までは、ホンダのエースライダーとして君臨し続けました。2011年はチームメイトのドビツィオーソ(2位)に次ぐ3位でしたが、そのほかの年は毎年ホンダの中では最上位の成績を記録しています。
毎年シーズン開幕前には優勝候補の筆頭に挙げられますが、Moto-GP昇格以降はほぼ毎年のように骨折を伴う大怪我を負っています。2013年以降は大きな怪我は少なくなりましたが、その矢先にマルケスが加入してエースライダーの座を受け渡すことになります。
実力を見ればチャンピオンに複数回輝いていてもおかしくないのですが、不運な部分を強く感じられます。
■ペドロサの主な負傷歴
2003年:オーストラリアGPにて左足距骨骨の骨折と右足首の破砕骨折
2005年:日本GPにて腱に影響した左上腕骨頭部の破砕骨折
2006年:マレーシアGPにて左爪先の小破砕骨折
2007年:日本GPにて左足爪先の外傷後関節炎。
2008年:セパンテストにおいて右手の第二中手骨の破砕骨折
2008年:ドイツGPにて左人差し指の末節骨の変位骨折。左中指の横指節間関節の捻挫、左手首の骨折、右足首の捻挫
2008年:オーストラリアGPにて左膝のカプセル血腫。2ヵ月後に治療されなければならなかった。
2009年:カタールテストにおいて左腕の橈骨骨折、過去の手術跡が開き皮膚移植を行わう
2009年:イタリアGPにて右大腿骨大転子の不完全骨折。置換のない破砕骨折
2010年:日本GPにて左鎖骨の4断片の剥離骨折および足首の捻挫
2011年:フランスGPにて右鎖骨の骨折
2013年:ドイツGPにて左鎖骨の小骨折
冷静沈着で謙虚な性格
情熱的な人の多いスペイン人ですが、若手の頃から感情を表に出さない、冷静沈着な性格で有名でした。ただのメディア嫌いや恥ずかしがり屋というわけではなく、輝かしい成績を残していた若手時代にも天狗になることもなく、自分に対して控えめで謙虚な性格のため、チーム員からの評判も良かったです。
ホンダからWGPに参戦してからも、監督の指導のもとで精神面を鍛えることに重点を置いて、ライバルチームのライダーとコミュニケーションを禁止する取り決めも忠実に守っていました。
一部では、可愛げがないとか無愛想といった評価をするメディアもありますが、ペドロサの強さの一つは精神力です。現役ライダーの中でもトップクラスに強いメンタルを持っているため、長年トップチームで安定した活躍を見せています。
レースになると控え目な性格ではなく、勝負どころを理解して、状況に応じたプッシュをできるなど決め手を持っていて、怪我の影響が残る中でも数々の熱いレースを繰り広げてきました。
自転車で鍛えた強い肉体
ペドロサはMoto-GPライダーの中で身体が小さいことで有名です。Moto-GPクラスに昇格する前の体重は43kgほどで、Moto-GPマシンに乗るためにウェイトトレーニングで50kg台の体重まで増やした経緯があります。
当初は「車体の大きなMoto-GPマシンはペドロサの体格では無理」と批判する評論家の声も多数ありましたが、Moto-GPデビュー戦でいきなり2位に入り、評論家の声を一蹴しました。
ペドロサは幼少期から自転車競技をしていた時期もあり、現在もサイクリング好きで有名です。一時期は自転車競技でプロを目指すほど、高い実力を持っていて、小さい身体ながらも下半身を中心にした強靭な肉体を持っています。バイクレースでは、大きい筋肉よりも持久力を求められるため、自転車競技で鍛えた経験がバイクレースにも活かされています。
ペドロサのキャリア
幼少期
4歳でバイクに乗り始めます。初めてのバイクは補助輪付きのイタルジェット50でした。6歳からレース用バイクに購入しますが、カワサキを模した3流メーカーのバイクで遊び半分で友達とレースを楽しむ程度でした。9歳からポケバイの本格的なレースに参戦して、スペインのポケバイ選手権で年間ランキング2位に入ります。
12歳でミニバイクのチャンピオンを獲得しますが、経済的な理由でロードレースを続けることが困難になり、翌年はレースに参戦できず、もう一つの趣味でもある自転車競技でプロを目指す場面もありました。同年(1999年)に大手通信会社・テレフォニカが支援するスペイン人グランプリライダー養成プロジェクト(モビスター・アクティバ・カップ)の存在を知り、これに応募します。
公開テストでは8位完走を果たし、レーシングチームに所属して2000年よりスペイン選手権にデビューを果たし、年間ランキング4位に入り、翌年よりWGP125ccクラスへステップアップします。
WGP125cc時代
2001年にテレフォニカ・モビスター・ジュニア・チームよりWGP125ccクラスに参戦し、ルーキーながら2度の表彰台を獲得します。
2年目の2002年には第7戦ダッチTTで初優勝を挙げて年間ランキング3位、3年目でWGP125ccクラスの年間チャンピオンを獲得します。しかし、チャンピオンを決めた後の第15戦オーストラリアGPのフリー走行中の転倒で、両足首を骨折する大怪我を負ってしまいます。
WGP250cc時代
WGP125ccクラスでの活躍から、チャンピオン獲得した翌年の2004年にアルベルト・プーチ監督とともに250ccクラスに昇格します。怪我の影響でテストをほとんどできないままデビュー戦を迎えますが、250ccの開幕戦でいきなり優勝をして、圧倒的な強さで初年度から年間チャンピオンを獲得します。
すぐにMoto-GPへの昇格かと思われましたが、体格の問題でもう1年250ccクラスに参戦することになります。翌2005年も変わらずの強さで、250ccクラスで2年連続チャンピオンを獲得。ウエイトトレーニングで体重も増やし、翌年よりレプソル・ホンダ(ワークスチーム)に所属してのMoto-GP昇格を決めます。
Moto-GP時代
2006年にMoto-GPデビューを果たし、開幕戦で2位、第4戦中国GPで初優勝、第9戦イギリスGPで2勝目を挙げ、チャンピオン争いにも加わります。第13戦マレーシアGP前の時点でチームメイトのニッキー・ヘイデンに次ぐポイントランキング2位につけていましたが、マレーシアGPフリー走行の転倒で膝を強打してしまいます。
決勝では奇跡的に3位表彰台を獲得しますが、その後のレースで怪我の影響が残り失速し、シーズン5位でデビューイヤーを終えます。250cc時代のライバルで後に世界チャンピオンを獲得するケーシーストーナーを抑え、この年のルーキーオブザイヤーを獲得します。
2007年はMoto-GPのレギュレーション変更でマシンの排気量が800ccになり、小柄な体格のペドロサには有利と期待されましたが、年間ランキングは2位、2008年は怪我とタイヤに苦しみながらも年間チャンピオン争いに加わる活躍を見せますが、年間ランキングは3位に沈みます。
もし、ホンダが強い時代であれば、このあたりでチャンピオンを獲得していた可能性もあったでしょう。
2009年も開幕前のテストで怪我をするなど前半戦で苦しみますが、後半に巻き返して年間ランキング3位。2010年はシーズン序盤から中盤にかけて優勝4回・2位5回の好成績を残してポイントランキングで一時、独走状態になります。
しかし、第14戦日本GPでマシントラブルによる転倒で鎖骨を骨折して、3レースを欠場することになり年間ランキング2位で終わります。ペドロサのキャリアの中では、2012年と並んで、もっとも年間チャンピオンが近かった年となります。
2011年は再び怪我とクラッシュに苦しみ優勝3回を記録するも年間ランキングは4位。2012年は7勝の最多勝を獲得しますが、ポイント差でロレンソ(ヤマハ)に敗れて2位。前半の7戦は2位3回、3位3回の安定感を出して、後半戦は優勝を重ねる躍進を見せました。
第13戦サンマリノGPの予選でポールポジションを獲得しますが、ペドロサのマシンのフロントタイヤに装着していたタイヤウォーマーが張り付き、予備のマシンと取り替えられて後方グリッドに戻される不運を強いられます。後方グリッドからスタートした決勝レースではオープニングラップでエクトル・バルベラと接触しリタイアしてしまい、このレースをロレンソが優勝したことがチャンピオンを逃す決め手になりました。
年間7勝表彰台15回で獲得した332ポイントは、タイトルを獲得できなかったポイント数で最も高い記録となっています。
2013年も年間3勝をあげてチャンピオン争いに加わりますが、第8戦ドイツGPは負傷のため欠場、第14戦アラゴンGPでマルケスと接触してのリタイヤが響き、300ポイント獲得するも年間3位に沈みます。2014年も安定感を見せましたが、10連勝を達成したマルケスの独走、ポイントランキングでは2位争いをしていましたが、オーストラリアGP、マレーシアGPでのリタイアが響き年間4位になります。
2015年は腕上がりの手術で前半戦を3戦欠場、初優勝は第15戦日本GPという厳しいシーズンになりますが後半で巻き返して年間ランキング4位。2016年も第13戦サンマリノGPで優勝するも前半戦から苦戦し、後半はリタイヤ、欠場もあって年間ランキング6位。
2017年は安定感を見せますが、チャンピオン争いに加わることができず、年間ランキング4位。最終戦のバレンシアGPでシーズン2勝目を上げて来季の復活へ希望を残す結果になりました。
WGP・MOTO-GPでの年間成績
シーズン | クラス | チーム | マシン | 優勝回数 | ランキング |
---|---|---|---|---|---|
2001年 | WGP125cc | テレフォニカ・モビスター・ホンダ | ホンダ・RS125 | 0回 | 8位 |
2002年 | WGP125cc | テレフォニカ・モビスター・ホンダ | ホンダ・RS125 | 3回 | 3位 |
2003年 | WGP125cc | テレフォニカ・モビスター・ホンダ | ホンダ・RS125 | 5回 | 1位 |
2004年 | WGP250cc | テレフォニカ・モビスター・ホンダ | ホンダ・RSW250 | 7回 | 1位 |
2005年 | WGP250cc | テレフォニカ・モビスター・ホンダ | ホンダ・RSW250 | 8回 | 1位 |
2006年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC211V | 2回 | 5位 |
2007年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC212V | 2回 | 2位 |
2008年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC212V | 2回 | 3位 |
2009年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC212V | 2回 | 3位 |
2010年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC212V | 4回 | 2位 |
2011年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC212V | 3回 | 4位 |
2012年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC213V | 7回 | 2位 |
2013年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC213V | 3回 | 3位 |
2014年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC213V | 1回 | 4位 |
2015年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC213V | 2回 | 4位 |
2016年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC213V | 1回 | 6位 |
2017年 | Moto-GP | レプソル・ホンダ | ホンダ・RC213V | 2回 | 4位 |
おわりに
ダニ・ペドロサはMoto-GPでのチャンピオン経験もなく、冷静で感情を表に出さない性格のため、現役ライダーの中でも目立つ存在ではありません。しかし、幼少期から資金面でロードレースを断念しそうになる場面があったことや、小さい身体で大きなMoto-GPマシンを乗りこなすなど努力家でもあり、応援したい存在です。
ただし、現実を見るとトップライダーの実力を持っているものの、マルケスという新生が現れたため、マルケスに大きなトラブルがなければチャンピオン獲得するのは難しい状況です。2015年〜2016年には引退の噂も出ていましたが、2017年もシーズン2勝をあげる活躍を見せています。
もし今後のキャリアの中でMoto-GPのチャンピオンを獲得するようなことがあれば、チームクルーや度重なる怪我など、ペドロサの苦労を知っているファンからは大きな祝福を送られるでしょう。
ペドロサはチャンピオンという実績はないですが、小さい身体でもMoto-GPで優勝争いをできることを証明し、ホンダのバイクは誰にでも乗りやすいイメージを与えた功労者です。

この記事を書いたのはライターのブルさん。
ベテランライダー。大型バイクから原二スクーターまで5台のバイクを乗り継いできた経験だけでなく、数々のツーリング経験、サーキット経験などバイクに関する豊富な経験を持つ。自動車業界に勤めていた経験もあり。
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