ホルヘ・ロレンソの経歴、特徴、エピソード
※2017年12月13日現在
氏名 | ホルヘ・ロレンソ・ゲレーロ(Jorge Lorenzo Guerrero) |
---|---|
所属チーム | ドゥカティ・チーム |
生年月日 | 1987年5月4日(30歳) |
出身地 | スペイン・バレアレス諸島 |
主な実績 | Moto-GP年間チャンピオン3回、WGP250ccクラス年間チャンピオン2回 |
現在はドゥカティに在籍しているロレンソですが、ヤマハ時代にはMoto-GPで年間チャンピオンを3回獲得した実績を持っています。ライダーとして優秀であることは確かですが、スペイン人らしい情熱的な性格で、レース中やバイクに乗っていないときも話題になることが多いです。
2008年にMoto-GPに参戦してからは、2016年まで8年連続で年間ランキング4位以内と、抜群の安定感を見せ、毎年優勝争いに食い込む存在でした。しかし2017年にドゥカティに移籍してからはマシンに順応できず苦戦を強いられて、年間ランキング7位という結果で終わりました。
第16戦のマレーシアGPでは、今シーズン最高の2位につけて来季への期待を残しました。
ヤマハとドゥカティのマシン特性は対照的
ヤマハは昔から「コーナリングのヤマハ」とも呼ばれていて、現在もMoto-GPの中でコーナリング性能に定評があります。ドゥカティは近年、Moto-GPマシンの中でも一番直線が速いと評されています。つまりコーナリングに強いヤマハの「YZR-M1」と、直線に強いドゥカティの「デスモセディチ GP」は両極端な特性を持っています。
また2017年シーズンに苦戦したのはマシンだけではなく、タイヤに順応できなかった点もあります。現在Moto-GPはミシュランタイヤのワンメイクになっているので、条件は全チームで同じですが、タイヤに対してライダーとマシンのそれぞれの相性の問題もあります。
2017年シーズンの前半はマシンに苦しむ姿が鮮明でしたが、第11戦のオーストリアGP以降は徐々に成績が安定してきました。現時点でドゥカティとの契約は2018年まで残っているので、来シーズンの巻き返しに期待です。
ロレンソの経歴
メカニックの仕事をしている父を持ち、3歳の時に手作りのバイクをプレゼントされてミニクロスレースをはじめます。9歳のころにはミニクロス、トライアル、ミニバイク、モトクロス(ジュニア)で数々のタイトルを獲得します。
11歳でミニバイクレースのコパ・アプリリアを制して、13歳でスペイン連盟から特別許可を得て、国内選手権125ccクラスへ参戦します。当時から天才ライダーとして注目を集めていて、競技規定の出場最低年齢(15歳)になってから、ファクトリーチームのデルビよりWGP125ccクラスに参戦します。
シーズン開幕当初は14歳のため参戦できず、第3戦のスペインGPで史上最年少(15歳と1日)でWGPデビューをした記録を持っています。デビュー翌年の2003年にはブラジルGPで初優勝を挙げて、2004年には年間ランキング4位、2005年より250ccクラスに昇格して年間ランキング5位と結果を残していきます。
2006年、2007年はWGP250ccクラスで2年連続チャンピオンを獲得(現在のチームメイトのドヴィツィオーゾ同じ時期の250ccクラス2年連続年間ランキング2位)、翌年よりヤマハからMoto-GPクラスへの昇格を決めます。
Moto-GP時代
250ccクラスで圧倒的な強さを誇っていたことから、Moto-GP1年目からファクトリーチームのフィアット・ヤマハ・チームでYZR-M1に乗ります。当時のチームメイトは圧倒的な強さを見せていたバレンティーノ・ロッシでした。ルーキーながら強気な性格で、レース中にチームメイトのロッシと激しいバトルを繰り広げる場面もありました。
MotoGPデビュー戦のカタールGPでポールポジションを獲得し、決勝でも2位に入る衝撃的なデビューを飾ります。その後、第3戦のポルトガルGPまで開幕3戦連続ポールポジションを獲得して、3戦目でMoto-GP初優勝を記録します。
シーズン序盤は好調でチャンピオン争いに加わっていましたが、転倒と骨折も多く、結果的にデビューイヤーは年間ランキング4位でした。ルーキーオブザイヤーを獲得しましたが、シーズン序盤の活躍を見ると物足りない結果です。
2009年もチームメイトのロッシとともにチャンピオン争いを繰り広げるも、転倒と骨折が多く、年間ランキングは2位になります。2年契約が切れてドゥカティへの移籍が噂されますが、このときはヤマハと契約延長をして、2010年にMoto-GPで最初のチャンピオンに輝きます。
その後も2011年2位、2012年チャンピオン、2013年2位、2014年3位、2015年チャンピオン、2016年3位と毎年年間チャンピオン争いに加わり、3度のチャンピオンを獲得する結果を残しました。
2017年シーズンよりドゥカティへ移籍したのは、複数のメーカーのバイクでチャンピオンを獲得し、より高い名声を手に入れるためのチャレンジになっています。
豪快なエピソードが多数
当サイトではMoto-GPライダーのさまざまなエピソードを紹介していますが、ロレンソは豪快な性格で紹介しきれないほどたくさんのエピソードを持っています。
母国のスペインGP終了後にはレーシングスーツとツナギを着たまま、サーキット敷地内にある池に飛び込むパフォーマンスを見せたり、優勝するとコースサイドのグラベルに「ロレンソ・ランド」の旗を突きたてるパフォーマンスなどが有名です。
Moto-GP参戦して間もないころは転倒と怪我も多く、骨折を押して出たレースが多数あります。特に有名なのは鎖骨連続骨折のエピソードで、2013年に左鎖骨を骨折し、手術直後のプレートを入れた状態でレースに出て5位入賞に入ります。5位ながらレース終了後には痛みに耐えてポイントを獲得したことから涙を見せる場面もありました。
次戦ザクセンリンクも強行出場しますが、フリー走行で転倒しプレートの入っている左鎖骨を再度骨折。プレートも曲がる大怪我を負いました。さすがにドクターストップで欠場しましたが、本人は強行出場を希望していたほどで男気を感じられるエピソードでした。
また、ロレンソはMoto-GPなどトップクラスのレースでは主流になっている「レーシングエアバック」を装着していません。転倒や怪我の多いライダーなのですが、500g重くなるという理由で着用を拒否していました。おそらく歴代のGPライダーの中でもトップクラスにストイックです。
プライベートも豪快で、スペインに豪邸を立てて動画で紹介したところ、批判する意見があったことで一瞬で売却するなど、破天荒な一面も持っています。
250ccクラス時代はイケイケだった
250ccクラス時代は圧倒的な速さも去ることながら、今よりも性格的にトガっていて、危険な仕掛けを行ってトラブルになるケースも多数ありました。2005年には危険な追い越し行為により出場停止処分を受けて、それからは強引なライディングをする機会が少なくなりました。
しかし、当時はかなり周囲のライダーからも評判の悪いイケイケな性格で、処分を受けてからは大きく心を入れ替えて、他のライダーの危険運転を激しく批判して口論に発展する場面もありました。2005年の250ccで接触事故を起こしたダニ・ペドロサや、危険な運転をすることの多かった故・マルコ・シモンチェリなどと強い確執を持っていました。
ロレンソは凶暴で扱いづらいライダーというイメージを持たれがちですが、現在は性格的もだいぶ落ち着いていて、2017年シーズンは躍進したチームメイトのドヴィツィオーゾともうまくやっていたとされています。
WGP・MOTO-GPでの年間成績
シーズン | クラス | チーム | マシン | 優勝回数 | ランキング |
---|---|---|---|---|---|
2002年 | WGP125cc | カハ・マドリード・デルビ・レーシング | デルビ・RS125 | 0回 | 21位 |
2003年 | WGP125cc | カハ・マドリード・デルビ・レーシング | デルビ・RS125 | 1回 | 12位 |
2004年 | WGP125cc | カハ・マドリード・デルビ・レーシング | デルビ・RSA125 | 3回 | 4位 |
2005年 | WGP250cc | フォルトゥナ・ホンダ | ホンダ・RS250RW | 0回 | 5位 |
2006年 | WGP250cc | フォルトゥナ・アプリリア | アプリリア・RSW 250 | 8回 | 1位 |
2007年 | WGP250cc | フォルトゥナ・アプリリア | アプリリア・RSW 250 | 9回 | 1位 |
2008年 | Moto-GP | フィアット・ヤマハ・チーム | ヤマハ・YZR-M1 | 1回 | 4位 |
2009年 | Moto-GP | フィアット・ヤマハ・チーム | ヤマハ・YZR-M1 | 4回 | 2位 |
2010年 | Moto-GP | フィアット・ヤマハ・チーム | ヤマハ・YZR-M1 | 9回 | 1位 |
2011年 | Moto-GP | ヤマハ・ファクトリー・レーシング | ヤマハ・YZR-M1 | 3回 | 2位 |
2012年 | Moto-GP | ヤマハ・ファクトリー・レーシング | ヤマハ・YZR-M1 | 6回 | 1位 |
2013年 | Moto-GP | ヤマハ・ファクトリー・レーシング | ヤマハ・YZR-M1 | 8回 | 2位 |
2014年 | Moto-GP | モビスター・ヤマハ MotoGP | ヤマハ・YZR-M1 | 2回 | 3位 |
2015年 | Moto-GP | モビスター・ヤマハ MotoGP | ヤマハ・YZR-M1 | 7回 | 1位 |
2016年 | Moto-GP | モビスター・ヤマハ MotoGP | ヤマハ・YZR-M1 | 4回 | 3位 |
2017年 | Moto-GP | ドゥカティ・チーム | ドゥカティ・デスモセディチ GP17 | 0回 | 7位 |
おわりに
ロレンソは長年Moto-GPのトップライダーとして活躍してきたキャリアもあり、ベテランのイメージが強いですが、年齢的にはチームメイトのドヴィツィオーゾより学年ベースで2歳若いです。
2017年はロレンソにとって初めて本格的な挫折を味わったシーズンになり、本人も長年続けてきたライディングスタイルを変えるのは難しいとコメントしています。しかし年齢的にも油が乗っている時期ですし、彼のストイックな性格を考えれば、2018年シーズンも巻き返してくる可能性は高いでしょう。
2018年シーズンはロレンソが本来の力を取り戻して、チームメイトのドヴィツィオーゾや、2017年チャンピオンのマルケスとともにチャンピオン争いを繰り広げる展開になれば、盛り上がります。
ロレンソは派手な行動や過激な言動でアンチも多いですが、一部では30歳を迎えて性格的に丸くなったことで、つまらなくなったと寂しい気持ちを抱いているアンチもいるでしょう。2018年シーズンは良い意味でロレンソの話題がたくさんニュースに出てくることを期待しています。
もし来季も結果がでないとチームを移籍する可能性もあるので、来季終了後の去就にも注目です。

この記事を書いたのはライターのブルさん。
ベテランライダー。大型バイクから原二スクーターまで5台のバイクを乗り継いできた経験だけでなく、数々のツーリング経験、サーキット経験などバイクに関する豊富な経験を持つ。自動車業界に勤めていた経験もあり。
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