KTMのバイクレース実績、参戦状況、レーシングチームの特徴
KTMは古くからモトクロスやダカール・ラリーなどの、オフロードレースで実績を積み上げてきた「オーストリア」のバイクメーカーです。近年はロードレースにも力を入れていて、2003年よりロードレースに復帰し、WGP125ccクラスを経てMoto-3で活躍しています。
2017年には独自にV4エンジンを含めた完全オリジナルのファクトリーマシンによって、最高峰クラスのMoto-GPにフル参戦を始めました。
KTMのバイクレース参戦状況や過去の実績をまとめました。
KTMのレーシングチーム
Moto-GP | レッドブルKTMファクトリーレーシングとして2017年よりMoto-GPフル参戦開始。 2017年ライダー部門17位(ポル・エスパルガロ)、マニファクチャラーズ・ランキング5位、チームランキング10位。 レッドブル KTM アジョとして2017年よりMoto-2クラスフル参戦開始。 2017年ライダー部門14位(ミゲル・オリベイラ)、マニファクチャラーズ・ランキング2位。 ファクトリーチームのレッドブル KTM アジョをはじめ、多数のKTM使用チームがMoto-3クラスに参戦。 |
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モトクロス世界選手権(WMX) | Red Bull KTM Factory Racingとして参戦。 MXGPクラス2017年1位、2位獲得(チャンピオン:A.カイローリ、2位:J.ハーリングス)。 MX2クラス2017年チャンピオン(P.ヨナス)。 2017年MXGP、MX2でそれぞれマニファクチャラーズタイトルを獲得し、4冠の完全優勝。 |
FIMスーパーエンデューロ世界選手権 | 2017年Enduro GPクラス3位(NATHAN WATSON)。 2017年Enduro2クラス1位: Josep Garcia。 2012-2016年E1クラス(当時の最高峰クラス)5連覇。 |
ダカールラリー | 2017総合優勝(16連覇達成)。 |
FIMワールドスーパーMOTO | 2017年現在、KTM勢が圧倒的強さを発揮し毎年チャンピオンを輩出。 |
世界最強のオフロードバイクメーカー
モトクロス、エンデューロ、ラリーでの国際レースの結果を見ると、KTMは世界最強のオフロードメーカーだと評価できます。モトクロス世界選手権は、2016年にホンダがチャンピオンを獲得し、ヤマハも2000年以降に複数回のチャンピオンを獲得しています。しかし、2010年以降の実績や安定感を見ると、KTMは日本メーカーの一歩上を行っています。
日本メーカーの軽量オフロードバイクは、市場全体が縮小していて、市販車のラインナップも少なくなっています。レーサーマシンの開発は各メーカー続けていますが、KTMに一歩先を行かれているのが現状です。ただし、KTMのオフロードバイクは250ccクラスでも100万円前後するので、価格は高いです。
Moto-3クラスのトップメーカー
KTMは、2003年にロードレースに復帰してから、Moto-3を主戦に置いて年間チャンピオンを3度も獲得しています。マニファクチャラーズ・ランキングも上位の常連で、ホンダ、アプリリア、デルビと並んでMoto-3のトップチームです。
Moto-3のレギュレーションは4ストローク250cc単気筒エンジンです。日本市場では現在250ccスポーツバイクブームが起こっています。しかし、売れているのは2気筒エンジンモデルなので、販売台数ではホンダのCBR250RRやヤマハのYZF-R25、カワサキ、Ninja250が大きくリードしています。
小排気量エンジンに強いKTMは、今後、日本の小排気量バイク市場においても、さらに成長してくる可能性がありそうです。
Moto-GPマシンRC16の実力
RC16の最高出力は270馬力前後とも言われていて、出力だけで見ればライバルメーカーのマシンよりも優れています。しかし、Moto-GPフル参戦1年目の2017年シーズンはライダー部門最高17位、チームランキング10位の成績で終わりました。
最高峰クラス1年目から結果を出すことは誰も期待していなかったことですが、KTMのMoto-GPマシンとトップチームのマシンはどれくらい違うのでしょうか?もともとヤマハのサテライトチーム(Moto-GP)で活躍していて、2017年にKTMに移籍したポル・エスパルガロ選手はインタビューで、「アグレッシブな走りをするとヤマハのYZF-M1よりも乗りやすい」と答えています。
KTMのRC16は、マシンエンジンや独自のトレスフレームなど、主要パーツの完成度はライバルに比べて負けていないのですが、パワーを制御して効率良くまとめる技術でトップチームに劣っています。RC16が必要とされるプッシュする乗り方をすると、タイヤの消耗も激しくなるのも大きな問題です。
また、Moto-GPフル参戦1年目ということもあり、KTMはチームとしての信頼性も乏しく、ライダーの技量でもライバルに劣っています。トップチームに行くには、優秀なライダーを獲得したり育てる必要があります。
2017年の結果以上にトップチームマシンとの性能差は少なく、プッシュした乗り方を好み、タイヤマネジメントも得意なライダーであれば、表彰台以上も可能なマシンです。今後はマシンのセッティング調整と、ライダーの獲得・育成が上位チームに成長するためのカギです。
KTMはMoto-3やモトクロス、エンデューロなど、ワークスチームを送り込んだ数々の世界的レースでチャンピオンを獲得してきた実績があります。Moto-GP制覇はKTMの歴史でも過去最高難易度のミッションで簡単なことではないですが、過去のモータースポーツのキャリアを見ると、数年後にはチャンピオンを獲得してもおかしくない不気味なメーカーです。
2018年にはRC16の市販車を発売
KTMは、Moto-GPマシンRC16の市販向けモデルを2018年に発売する予定です。レース専用車で、エンジン出力はMoto-GP用の270馬力より抑えた240馬力で、90度V4スクリーマーエンジンを搭載します。価格は10万〜12万ユーロ(日本円で1,225〜1,470万円)を予定しています。
ちなみにホンダから発売された公道も走れる213VーSの価格は2,190万円なので、競技専用車ということを考えても、Moto-GPベースのマシンを1,500万円以下で販売するのは安い価格設定です。
RC16の市販車は一般の人ではなかなか買うことができませんが、近い将来はドゥカティのパニガーレV4のように、Moto-GPマシン開発で培ったV4エンジンの開発力を活かして、近い将来リッタークラススーパースポーツに参入してくるかもしれません。
おわりに
2003年にKTMがロードレース世界選手権125ccクラスに参戦したときは、こんなに強いチームになるとは思っていませんでした。日本ではオフロードバイクレースの注目度が低く、KTMは最近出てきた新参業者だと思っている方も多いです。しかし、オフロードバイク業界では世界を牽引するトップメーカーで、開発力の高さはMoto-GPで上位に入るトップチームに負けていません。
ロードバイクの成功で資金力もあり、KTMとしては初めて開発したV4エンジンで、270馬力のハイパワーを達成したのは凄いことです。2015年にMoto-GPに参戦したアプリリアはリッタークラスのスポーツバイクや、ロードバイクレースで長い歴史と実績がありますが、KTMはいきなりアプリリアよりランキング上位に入る活躍を見せました。
ライダーで劣る2018年シーズンは苦戦する可能性が高いですが、5年後・10年後にはバイクメーカー、レーシングチームの双方で、今よりも飛躍的な成長を遂げてくる可能性を感じます。世界でもっとも伸びシロの大きいバイクメーカー&レーシングチームだと評価しています。

この記事を書いたのはライターのブルさん。
ベテランライダー。大型バイクから原二スクーターまで5台のバイクを乗り継いできた経験だけでなく、数々のツーリング経験、サーキット経験などバイクに関する豊富な経験を持つ。自動車業界に勤めていた経験もあり。
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