バイクのエンジンの種類
バイクは車種によってエンジンの構造が異なります。
たとえば、スーパースポーツバイクは水冷4サイクル直列4気筒エンジンが主流です。原付スクーターは、空冷4サイクル単気筒エンジンが多いです。
バイクのエンジンの種類ごとの特徴をまとめました。
このページの目次です
バイクのエンジンの種類には4つの分類がある
バイクのエンジンの種類は次の項目で分類されます。
- 4サイクル or 2サイクル
- 冷却方式(水冷、空冷、油冷など)
- 気筒数
- エンジンの形状(直列、V型など)
それぞれ詳しく紹介します。
4サイクルと2サイクルの違い
エンジンは、吸入・圧縮・爆発・排気の4つの工程を繰り返します。
4サイクルエンジンは、4つの工程でピストンを4往復(4ストローク)させて、吸入・圧縮・爆発・排気を行います。2サイクルエンジンは、吸入・圧縮と爆発・排気をそれぞれ同時に行い、ピストンを2往復で4つの工程を行います。
ピストンのストローク数と1回のエンジンの工程数を合わせて、正確には、4サイクル4ストローク、2サイクルストロークと呼びます。バイクの場合は、4スト・2ストとストローク数でエンジンの種類を表現される事が多いです。
4サイクルと4ストや、2サイクルと2ストは同じと覚えておきましょう。
2サイクルは排ガス規制の影響により90年代中盤には新車のラインナップからなくなり、現在は4サイクルバイクのみになっています。2サイクル(2スト)はエンジンの構造が簡単で、同じ爆発回数で多くの工程をこなせる事から、4サイクルよりもパワーが出やすいです。
構造が簡単なのでメンテナンスやカスタムも容易ですが、エンジンの負担が大きいので故障しやすいデメリットがあります。2サイクルは現行車にはないパワーと加速があり、代表車種のNSR250をはじめ、中古市場では高値で流通している車種が多いです。
冷却方式の違い
エンジンは、ピストンが高速で動く摩擦の熱によって、エンジンの燃焼室とエンジンオイルが高温になります。エンジンオイルの温度が上がりすぎると、オーバーヒートを起こしてしまいます。
エンジンのオーバーヒートを抑えるためにも、エンジンは冷却をしないといけません。
冷却方式は、主に次の3種類があります。
- 水冷
- 空冷
- 油冷
バイクは現在水冷と空冷が主流で、走行性能が高いスポーツバイクは水冷エンジンが多いです。
油冷はスズキが得意にしていましたが、現在は新車のラインナップから姿を消しています。
水冷エンジン
シリンダーやシリンダーヘッドなど、エンジンの内部に冷却水用の通路を設置して、クーラント(冷却水)の力でエンジンを冷やします。クーラントはラジエターの風の力(ファン)を使って冷却します。
サーモスタット(温度計)で、冷却水の温度に応じてラジエターを回し、安定した水温とエンジン冷却性能を確保できます。
ラジエターが必要になるなど、製造コストが高いですが、冷却方式のなかで最も冷却性能とエンジン温度抑制の安定性が高いです。
スポーツバイクなど、高圧縮でエンジンの温度が上がりやすいバイクに採用される事が多いです。
空冷エンジン
空冷エンジンは、エンジンが直接風に当たる面積を大きくして、風の力でエンジンを冷却します。
構造が簡単でバイクは排気量が小さいため、採用される事が多い冷却方式です。
スクーターや単気筒のバイクなど、エンジンの負担が少ない車種の定番エンジンです。
油冷エンジン
大量のオイルをシリンダーヘッドやピストンに噴射して冷却し、エンジンオイルは大型オイルクーラーやオイルタンクで放熱します。
カスタムをするとエンジンのパワーアップがしやすいメリットがありますが、排ガス規制の問題で現在は新車のラインナップから姿を消しています。
冷却方式はそれほど気にする必要は
バイクのエンジンの冷却方式をまとめると、水冷エンジンがもっとも性能が高いです。ただし、あくまでもエンジンのパフォーマンスではなく冷却性能が高いだけです。
カスタムをしてエンジンのパワーを上げたい場合は、水冷エンジンを選ぶとオーバーヒートリスクが少ないです。どの冷却方式でもバイクがオーバーヒートしないようにメーカーが考えて設計されています。
カスタムやサーキットのスポーツ走行などをする方を除いて、冷却方式はそれほど気にする必要はありません。
気筒数
気筒数とは、エンジンのシリンダー(燃焼室)の数です。バイクのエンジンは主に、単気筒、2気筒、4気筒があります。一部の車種では、3気筒(トライアンフなど)や6気筒(CBX1000やBMWなど)のエンジンもあります。
シリンダーはガソリンと空気を混ぜて爆発を起こす場所です。燃焼室の容量がバイクの排気量になります。
たとえば、400cc単気筒のバイクは400ccのシリンダーが1つ。400cc4気筒のバイクは100ccのシリンダーが4つになります。また、シリンダーの数に応じて、マフラーの吹き出し口の数も変わります。
エンジンのシリンダーは、容量が大きい方が爆発力が高くなりパワーが出ます。しかし、シリンダーの容量が大きくなりすぎるとエンジンの負担が大きくなり、シリンダー容量の大きさには限界があります。理論上は一つのシリンダーは800ccほどが限界と言われています。
また、ひとつのシリンダーが大きくなると構造上エンジンが高回転で回らなくなります。気筒数を増やすことで、シリンダーひとつあたりの爆発力は下がりますが、より高回転でエンジンを回す事ができます。
400cc単気筒のSRや大排気量で2気筒エンジンを搭載しているアメリカンバイクは、重厚感があるエンジンフィーリングが特徴ですが、最高速が出にくいです。4気筒エンジンは、高回転型エンジンを作れるので最高速度が速いバイクを作れます。
気筒数はエンジンの排気量とのバランスが重要です。125cc以下の原付バイクは単気筒でないとバイクを走行させる必要なパワーを確保できなくなります。
排気量が大きくなるほど、様々な気筒数のバイクの選択肢が増えます。排気量が大きくなりすぎると、構造上単気筒エンジンでは対応できなくなります。
エンジンの形状
2気筒以上のエンジンは、複数のシリンダーを配置する形状に複数の種類があります。
エンジンの形状は主に次の3種類があります。
- 直列エンジン
- V型エンジン
- 水平対向エンジン
バイクのエンジンでは直列エンジンとV型エンジンが多く、水平対向エンジンはBMWやホンダのワルキューレやゴールドウイングなど一部の車種に限定されます。
直列エンジンは、その名の通り、シリンダーが直線上に並んでいます。
V型エンジンは、エンジンの形状がV型になっていて、エンジン全体が屈折した作りになっています。
水平対向エンジンは、シリンダーを水平に向かい合わせる形状で、ボクサーエンジンとも呼ばれています。
バイクのエンジン形状は直列エンジンがシンプルな構造でもっともスタンダートです。構造が単純なのでメンテナンスがしやすく、エンジン重量を軽くできるメリットがあります。デメリットとしては、排気量が大きくなるとエンジンの横幅が広がり、クランクシャフトも長くなる事から、ねじれ振動がおきやすくなります。
V型エンジンはシリンダーを屈折した形状にできるので、排気量が大きくてもエンジンをコンパクトにできるメリットがあります。また、クランクシャフトが短くなるため、エンジンのねじれ振動が少ないなどメリットが多いです。ただし構造が複雑で製造コストやメンテナンスコストが高く、エンジンの重量も重くなるデメリットがあります。
水平対向エンジンは、振動を打ち消しあって振動が少なく、形状上、風に当たりやすいので空冷エンジンとの相性が良いメリットがあります。ただし、製造コストが高くエンジンの重量や大きさがかさむため、現在はあまり普及していません。
理論上はV型が最強、市販車では直列が最強!?
エンジン形状は、理論上突き詰めていくと、V型エンジンがもっとも高いパフォーマンスを出せる構造です。世界最高峰のレースMOTOーGPのマシンはほとんどがV型エンジンです。しかし、市販車のリッタークラススーパースポーツを見てみると、直列エンジンが主流になっています。
構造上はV型エンジンの方がパフォーマンスが高いですが、直列エンジンはコストパフォーマンスが良く市販車レベルでは十分なパワーを発揮できます。直列エンジンでも開発力の進歩で、市販車レベルではV型エンジンと同等以上のスペックを誇れるようになりました。
まとめ
エンジンは理論上の話をすれば、400cc以上のバイクであれば、水冷直列4気筒エンジンがもっとも価格に対してのコストパフォーマンスが良く、最高速など性能も高くなります。しかし、購入するバイク選びでは、性能や最高速だけではなく、エンジンフィーリングを選ぶ事も大切です。
たとえばヤマハのSRは400cc単気筒エンジンで最高速こそ他の400ccクラスに劣るものの、アイドリングの振動が大きく軽量でカスタムしやすい構造で、コアなファンをたくさん獲得しています。アメリカンバイクも同様に、大排気量V型2気筒エンジンにする事で、重厚感があるエンジンフィーリングを楽しみます。
バイクのエンジンの種類で迷っている方は、販売店などの試乗会で色々なエンジンのバイクに乗ってみるとよいでしょう。
単純に高性能のバイクを求めている場合は、気筒数は4気筒を上限に多い方がよく、同じ価格帯で売られているバイクであれば、直列エンジンの方が性能が高いです。
私個人的には、今でも2ストのスポーツバイク(NSR250など)に乗りたい気持ちを抱いています。

この記事を書いたのはライターのブルさん。
ベテランライダー。大型バイクから原二スクーターまで5台のバイクを乗り継いできた経験だけでなく、数々のツーリング経験、サーキット経験などバイクに関する豊富な経験を持つ。自動車業界に勤めていた経験もあり。
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