YZ450Fに搭載された「パワーチューナー」で見えた将来のバイクの形

ヤマハは2017年8月30日に、2018年モデルの新型YZ450Fを発売しました。YZ450Fは競技用オフロードマシンで、モトクロスなどをオフロード競技を楽しむ方以外には縁のない車種です。しかしレーサーモデルということで、ヤマハ初となるリチウムイオンバッテリーの搭載など、公道用モデルへの応用を期待できる新装備を複数導入しました。

その中でも、スマホアプリでエンジンチューニングを行える「パワーチューナー」に注目が集まっています。現時点で公道用モデルへの搭載予定はないですが、近い将来の新型バイクはスマホと連携させて、チューニングやメンテナンス管理を行うことが可能になるでしょう。

スマホでバイクのエンジン設定を変更できる「パワーチューナー」の可能性

バイクの吸気システムがキャブレターからインジェクションに変更されてから、バイクのチューニングはコンピューターで行うようになりました。キャブレターのときは、メインジェットを交換するなど、キャブレターを分解しないと細かいセッティングができませんでした。

しかしインジェクションになってからは、主にディーラーや整備業者の持っている専用端末にバイクを繋いでセッティングやROMの書き換えを行っています。私もGSX-R750(2000年式水冷モデル)に乗っていたときは、インジェクション警告灯が付いて、専用端末のある業者を探して、ROMの書き換えをしてもらった経験があります。

バイクレースを行う人は、純正よりも中低速トルクを犠牲にして、ピークパワーを高くするセッティングなどを行っています。新型YZ450Fに搭載されたパワーチューナーは、無料ダウンロードできるスマホアプリを活用しバイクとスマホをWi-Fiで繋いでスマホ上でエンジンの給排気の設定を行えます

つまり、従来は専用端末を持っている業者を使わないとエンジンセッティングできなかったのですが、YZ450Fのパワーチューナーを使えば、誰でもスマホによる簡単操作で設定変更が可能になります。

また、セッティングデータはネット上で共用されたり情報交換することが可能です。全国の同じバイクに乗っているオーナーや、レースに参戦しているチーム、ショップのデータをそのまま取り入れられるなど、エンジンセッティングの領域が広がります。

ちなみに、YZ450F用のパワーチューナーアプリは車両を持っていなくても、誰でもダウンロード可能です。興味のある方は「yamaha power tuner」をダウンロードしてみてください。

スマホアプリとバイクが連携できるのがポイント

競技やカスタム、スポーツ走行をする人でなければ、エンジンや吸気系の設定をする人は少ないです。最新のバイクは、ハンドルに用意されたスイッチでパワーモードを変更することもできるので、パワーチューナーの機能を聞いても魅力を感じない方も多いでしょう。

実際にパワーチューナーの需要は、競技向けバイクのみで、ツーリングや街乗りメインの場合は必要ありません。しかし、バイクとスマホを連携させることは、様々な可能性を感じられるツールです。パワーチューナーによるバイクとスマホアプリの連携機能は応用すれば、次の機能を付けられる可能性があります

・オイル交換、車検、自賠責保険更新をスマホアプリで管理する
・長時間乗らないとコンディション管理で乗るようにアラーム設定できる
・電子制御によるライディングモードを搭載しなくても、スマホから設定変更できる(パワーモード変更機能の導入コストが下がる)
・電子制御サスペンションやトラクションコントロール、IMU、ABSなど他の電子制御と連携して設定変更できる
・燃費や平均時速など走行状況をデータ化できる
・Wi-Fiの繋がる場所でバイクを保管すれば、盗難・イタズラ防止機能を付けられる(バイクを触られるとスマホで警告)
・社外マフラーに交換したときも手軽に設定を最適化できる
・サーキットで自動的にリミッターを外せる
・バイクがどこを走っているか第三者がスマホから確認できる

GPSを搭載しないとできない機能もありますが、将来的にはスマホからバイクのセッティングや管理を行うなど、幅広いことができるようになるでしょう。盗難防止や盗難時の追跡機能の付いた社外部品や外部サービスもありますが、純正のままでスマホ連携による幅広い機能を付けられれば、バイクを所有するコストも下がります。

普段乗る機会が少ない方でもバッテリー上がりやブレーキキャリパーの硬直などを回避して、不具合発生リスクの軽減も期待できます。車の日産GT−R(R35)は、サーキットに行くとGPSの感知によって、自動的にリミッターの外れる機能もついています。バイクも同様の機能を応用できるでしょう。

YZ450Fはインジェクションのほかは電子制御技術の導入はありません。どんな車種にも応用できる機能なので、車両価格100万円超えの高級車種だけではなく、原付や250ccクラスなど幅広いバイクで普及する可能性があります。

なおYZ450Fのパワーチューナーには、レースログ機能や、消耗パーツの交換タイミングを管理するためのメンテナンスタイマー機能を搭載されています

ベースになったYZF-R1の「Y-TRAC」アプリ

YZ450Fに搭載されたパワーチューナーおよびスマホアプリは、2015年モデルより導入された「YZF-R1」の、スマホアプリ連携機能をベースに応用したものです。2015年式以降のYZF-R1(R1M)は、GPSと一体になった無線通信制御ユニット「CCU(Communication Control Unit)」と、スマホアプリ「Y-TRAC」を連携させたデータロギングシステムを導入しています。

データロキジングシステムは複数の機能がありますが、メインになるのはデータロガー機能です。ロガーとは、競技を行っている人が使う走行データを管理するツールです。
通常のロガーは専用機器を車種の取り付け、ロガー機器に搭載されたセンサーやGPSによって、様々な走行データを収集し、その後ロガー機器を取り外してパソコンに繋いで走行データを確認できるものです。

サーキットにおいて、ここのコーナーはどのようなライン取りをしたとか、コーナー進入時に速度などが表示され、自分の苦手なコーナーや走り方の特性を分析するツールです。バイク用ロガーは4〜5万円が相場ですが、YZF-R1は標準装備でロガー機能を搭載していて、なおかつスマホアプリ連動でパソコンに繋がずに瞬時にスマホ上でデータ閲覧できます。

YZ450Fのパワーチューナーは、GPS非搭載でデータロガー機能は付いていませんが、進角や燃調の変更など細かいエンジンチューニングが可能です。マップデータは100件以上保存可能で、将来的にはトップライダーのマップデータを配信予定です

おわりに

YZ450Fに搭載されたパワーチューナーには幅広い可能性を感じられます。現在付いている機能だけでも、話を聞くだけでワクワクしてきます。バリバリにレースをやらなくてもスマホからマップデータを書き換えて走り比べるだけでも十分楽しめるでしょう。

データはメール等で簡単にシェアできるので、普及すればコースごとにローカルの常連ライダーが作ったマップデータを活用して、手軽に最適化された状態で走ることもできます。
公道走行できる一般車種やロードバイクに搭載されれば、この峠はこのセッティング。サーキットではこのセッティング、通勤時は燃費重視のセッティングなどとスマホから状況に応じて設定変更できます。

さらにYZF-R1に採用されているGPS機能を活用すれば走行データの管理はもちろん、盗難防止装置としての役割も期待できます。すでにYZF-R1とYZ450Fでスマホアプリと連動した2つの機能を実用化しているので、開発面ではYZ450FのパワーチューナーとYZF-R1のY-TRACの2つの機能を併せ持ったツールまでなら、すぐに実用化できます。

さらに、スマホアプリとバイクが繋がるところまでクリアすれば、今後期待できる新しい機能を導入するのも難しいことではありません。パワーチューナーは公道モデルへの搭載は未定とアナウンスしていますが、早ければ2〜3年後にはスマホアプリとバイクが繋がっているのは当たり前の時代になっているかもしれません。

バイクを楽しく乗ることはもちろん、メンテナンスや盗難防止の観点でも、1日でも早く実用化することを期待したい画期的な機能です。

こちらの記事もあわせてどうぞ

バイクの最新ニュース
バイクの新型モデル情報、バイクグッズや法律動向などバイクに関わるバイク業界関連情報、バイクレース情報の最新ニュースを紹介しています。
バイクの最新ニュース
バイクの基礎知識
バイクを持つ前・持っているときに知っておきたい初歩的な知識、バイクを購入するときに知っておきたいこと、バイクを手放すときに知っておきたいことを紹介しています。
バイクの基礎知識
バイクを売るコツ
バイクを売るコツをつかめば、早く売る、高く売る、簡単に売るなど自分の希望に応じた売り方を選ぶことができます。
「バイクを売るコツ」はこちら
どの買取業者に売るかお悩みの方へ
どこの買取業者に売るかで迷ったら、当サイトのおすすめ買取業者をご参考下さい。 みんながどこでバイクを売っているか、買取業者利用アンケートも紹介しています。
「おすすめのバイク買取業者」はこちらで紹介

コメントを残す

サブコンテンツ

ページの先頭へ