カワサキのバイクレース実績、参戦状況、レーシングチームの特徴

カワサキはMoto-GPには参戦せずに、市販車ベースの最速を争う「SBK(世界スーパーバイク世界選手権)」に注力して、チャンピオンを獲得しています。このほかにも、レースレギュレーションを度外視した「H2R」を販売して話題を集めるなど、独自路線でバイクレースと向き合って開発した技術を、市販車にフィードバックしています

最近はZX-10RをはじめNinja250/400など、スペックでライバルメーカーと同等以上の評価を得る人気車種も多く、カワサキの戦略は成功していると評価できます。

カワサキのバイクレース参戦状況や過去の実績をまとめました。

カワサキのレーシングチーム

カワサキ(川崎重工業)は、スペインに子会社をおく「カワサキ・モータース・レーシング」より、SBKをはじめ、バイクレースにワークスチームを送り込んでいます。
カワサキ・モータース・レーシングの参戦しているレースの参戦状況と直近の成績は以下の通りです。

Moto-GP 2008年シーズンを持ってMoto-GPより撤退。
2009年シーズンは、すでに完成していた2009年型ZX-RRをプライベートチームのハヤテレーシングに提供、メランドリのみの1名体制でフランスGP2位表彰台、年間ランキング10位の成績を収める。
スーパーバイク世界選手権(SBK) Kawasaki Racing Teamとして参戦。
2017年ライダースとマニュファクチャラーズ2冠達成(2015年より3年連続)。
FIM世界耐久選手権 Team SRC Kawasakiとして参戦。
2017年シーズンランキング5位。
鈴鹿8時間耐久ロードレース Kawasaki Team GREENとして参戦。
2017年2位(レオン・ハスラム、渡辺一馬、ズラン・シャー・カマルザマン)。
モトクロス世界選手権(WMX) カワサキ・レーシング・チーム。
2017年ライダーランキング4位(クレマン・デサール)。
AMAスーパークロス モンスター・エナジー・カワサキとして参戦。
2017年450 SX年間ランキング2位(イーライ・トマック)。
2017年に250SXウエスト3位と250MX5位(ジョーイ・セバチ)。
AMAモトクロス選手権(アメリカのモトクロス選手権シリーズ) モンスター・エナジー・カワサキとして参戦。
2017年450MXチャンピオン(イーライ・トマック)。
全日本ロードレース選手権(JRR) カワサキチームグリーンとして参戦。
2017年シーズンランキング3位(渡辺一馬)。
アジアロードレース選手権 マニュアル・テック・KYT・カワサキとして参戦。
2017年スーパースポーツ600cc年間チャンピオン(アズラン・シャー・カマルザマン)。
全日本モトクロス選手権(JMX) カワサキチームグリーンとして参戦。
2017年IA1(最高峰クラス)2位(小方 誠)。

SBKに主戦を置くことで成功する

カワサキは2009年シーズンよりMoto-GPから撤退しました。Moto-GPを撤退した理由は、2008年シーズンの不調に加えて、リーマンショックの影響で財政面の問題が大きかったとされています。カワサキがMoto-GP撤退を決めたのは2009年1月のことで、すでに2009年シーズンのシートとマシンまで用意していました。

Moto-GPとの契約も2011年まで残っていたことから、苦渋の決断だったことを伺えます。当時は景気が上向けばMoto-GP復帰を考えていたハズですが、現在はMoto-GPへの復帰をする予定はありません。それは、Moto-GP撤退によって主戦においた「SBK(スーパーバイク世界選手権)」で成功を収めたからです

カワサキは2004年よりSBKに参戦していましたが、当初は上位に入るチームではありませんでした。Moto-GP撤退から徐々にSBKへかけるコストを増して行き、2012年よりカワサキ・モータース・レーシングの関与が大きくなってから飛躍します。

2012年はトム・サイクスの活躍でライダーランキング2位、最多ポールポジションを獲得。2013年はトム・サイクスによってカワサキ初のSBKワールドチャンピオンに輝きます。2014年もトム・サイクスによって2位を獲得。2015年以降はジョナサン・レイの活躍で3連覇とSBKでは無類に強さを発揮します。

SBKは市販車による世界最高峰のレースで、タイヤや電子制御の一部でMoto-GPよりレギュレーションの緩い利点があります。また、SBKの方が開発技術を市販車にフィードバックすることが容易で参戦するメリットが高いと考えているようです。

オフロードも世界トップクラス

モトクロス世界選手権やAMAスーパークロスでも、毎年ランキング上位に入る活躍を見せています。カワサキを代表するオフロードバイクのKLXは、陸上自衛隊の偵察部隊でも採用されるなど、パワーと耐久性に定評があります。

市販レーサーの販売にも積極的で、2010年以前はロードレースよりモトクロスなど、オフロードレースに強いバイクメーカーでした。公道走行可能の市販車は、KLX250の生産終了によってKLX125のみになってしまったのが残念です。

レースの世界ではトップクラスの活躍を見せているので、再びレースの開発力を市販車にフィードバックして、カワサキらしい高性能のオフロードバイクを販売してもらいたいです。

公道走行不可、レースにも出れないH2Rの開発

カワサキの独自路線はSBKに主戦を置くことだけではありません。2014年には川崎重工業グループの技術開発本部が総力をあげて、スーパーチャージャー搭載300馬力の「H2R」を発売して話題を集めました。その後、200馬力まで抑えて公道走行可能のH2を発表しています。

H2Rは公道走行不可の競技用マシンですが、スーパーチャージャーを搭載したことで、本格的なレースでもレギュレーション違反になってしまいます。つまり、レースに出ることもできず、サーキットのスポーツ走行だけしか走れないバイクです

レースレギレーションを度外視したバイクは他メーカーから複数出ていますが、レース車両がベースになっていたり、公道走行可能にしていることが多いです。H2Rはエンジン、シャーシなど全ての部品をイチから開発するという前例のないコンセプトモデルです。Moto-GPに参戦しているメーカーであれば、まず予算の降りない斬新なアイデアです。

H2R開発目的のひとつは、広告塔になってカワサキをPRしたりイベントで人を呼ぶことです。実際にH2Rは大きな話題になって、メディアでも多数取り上げるなど広告塔としての役割は果たしています

もう一つは次世代バイク開発のためのコンセプトモデルです。他メーカーはMoto-GPマシンの開発から市販車に技術をフィードバックしていますが、カワサキはH2Rから技術をフィードバックしようと考えています。カワサキのスポーツバイクの評価が上昇した要因のひとつは、H2Rを開発したノウハウもあるでしょう。

近い将来はスーパーチャージャーと電子制御を組み合わせて扱いやすくてハイパワー、お手頃価格の新型バイクを出してくるかもしれません。

おわりに

カワサキは元々空冷エンジンのZシリーズをはじめ、高性能よりも味のあるバイクで人気を集めてきたメーカーです。近年はスポーツバイクを筆頭に性能で勝負できる車種が増えています。

カワサキが性能面で急成長した要因は、Moto-GPからSBKに主戦を移して成功したことです。当初は戦略的にSBK転向したワケではなく、財政面で致し方なく行った選択でしたが、結果的にバイクメーカーとして大きな転機になりました。もし、Moto-GPへの参戦を続けたり、復帰していても、ホンダ、ヤマハの2強に勝つことは簡単なことではありません。

SBKでZX-10Rの開発やデータ収集に力を入れたことで、開発コストで大手に劣るカワサキが、ホンダ、ヤマハ、スズキと同等以上のスポーツバイクを出せるようになったのだと思います。今後もSBKやH2Rによる開発を市販車にフィードバックして、より高性能の新型バイクを出してくれることを期待します。

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