バイク電子制御テクノロジーの仕組み〜応用編〜

バイクの電子制御技術の中でも複雑な構造になっているのが、電子制御サスペンションとDCTです。ほかにも、ホンダがモーターショーに出品しているコンセプトモデルの「RIDING ASSIST(ライディングアシスト)」では、停止した状態で手を離してもバランスを保てる低速時で転ばない機能で話題を集めています。

ここでは、バイクの電子制御技術の中でも、限られたメーカーや車種にしか搭載されていない電子制御サスペンション、DCTと今後の普及を期待されるホンダ・ライディングアシストの構造についてまとめました。

ABS、トラクションコントロール、スロットル・バイ・ワイヤなど、幅広い車種に搭載されている電子制御機能はコチラのページで紹介しています。
バイク電子制御テクノロジーの仕組み〜基本構造、アクセルワーク編〜

電子制御サスペンション

機能名:電子制御サスペンション
正式名称:エレクトリック・コントロールサスペンション・システム(Electric Control Suspension)

電子制御サスペンションは以下の3種類があります。

・ESAタイプ ・・・ 本来は工具やダイヤルで行っていたサスペンションの減衰圧調整をボタン操作で変更する
・セミアクティブタイプ ・・・ 設定したモードをベースに走行状況によって自動的にサスの減衰圧を調整する
・フルアクティブタイプ ・・・ 目の前の路面状況から、これから起こる状況を想定し事前にサス調整を行う(一部の車で採用)

バイクに採用されている電子制御サスペンションは「ESAタイプ」と「セミアクティブタイプ」の2種類です。もともとは2004年にBMW(K1200Sのオプション)からESAの前進になるボタン操作で、サス調整可能(モード選択なし)の電子制御サスペンションが導入され、2014年に同じくBMWのHP4よりセミアクティブサスペンションを導入した歴史があります。

ESAタイプからセミアクティブタイプへ進化を遂げた経緯はありますが、コスト面から現行モデルでもESAタイプを採用している車種もあります。

セミアクティブタイプのように、走行状況に応じてサス設定を最適化してくれることは、バランスもよくなってタイヤへの荷重のかかり方も最適になります。レースなど競技用バイクとしても高い威力を発揮しますし、街乗りやツーリングなどの公道走行でも快適で安全に乗れるようになります。

たとえば、左コーナーは得意だけど右コーナーは苦手という方でも、セミアクティブタイプの電子制御サスペンションがあれば、右コーナーも左と同等以上にスムーズなコーナリングをできるようになります。セミアクティブタイプになると、新車価格200万円を超えるバイクにしか搭載されていませんが、将来的には幅広い車種への普及を期待されています。

電子制御サスって、なんでこんなに高いの?

電子制御サス搭載車種は、グレードによって選択の有無を選ばえることが多いです。ヤマハのMT-10の場合、通常グレードの価格は1,674,000円、SPは1,998,000円で差額は32万4千円です。SPにはオーリンズ製フルアクティブサスペンションとフルカラーTFT液晶を採用し、標準グレードはモノクロの液晶メーターとKYB製前後サスペンションです。

メーターの価格差は高めに見積しても3〜5万円。25万円以上はサスペンション変更による価格差です。電子制御テクノロジーで25万円以上の価格になっているワケではなく、オーリンズ製のフルアジャスタブル並の高機能サスペンションに変更されているのがポイントです。

参考までに、MT-09用のオーリンズ製フルアジャスタブルリアサスペンションの価格は15万円ほどします。オーリンズより社外のMT-09用フロントフォークは出していませんが、ワイズギアのKYB製フルアジャスタブルフロントフォークは約19万円します。

電子制御でサスの減衰圧を変えるためには、フルアジャスタブル(無段階調整式)の高機能サスペンションでないといけません。純正サスペンションも安いものではないですが、電子制御機能を抜きにしても、前後サスペンションの価格差だけでも15万円以上の価値はあると評価できます。

もちろん電子制御サスペンションは、スロットル・バイワイヤやタイヤの回転数、ブレーキなどIMUを通じて幅広い機構と連携を取って難しいロジックで作動するので、安いものではありません。それでも、電子制御テクノロジーの付加価値よりもサスペンション単体の価格差の方が大きいです。

つまり、電子制御サスペンションにアップグレードされたサスは、前後サスの「基本性能」と「電子制御技術」の2つの付加価値が加わっています

安価な電子制御サスペンションの普及が今後の課題となります。2017年には国産サスペンションメーカーの「SHOWA」が電子制御サスペンションを開発し、近い将来にはホンダのアフリカツインなど幅広い車種向けに量産する予定を出しています。今後は電子制御サスペンションが普及して幅広いメーカーが扱うようになれば、低価格の電子制御サスペンションも普及していくでしょう。

IMU搭載のコーナリングABSも普及していて、2018年春発売予定のCB125Rにも標準装備になると予想されてます。IMUがあれば電子制御サスペンションを組み合わせることは技術的に難しくはありません。当サイト独自の予想では、3年以内には250ccクラスでも電子制御サスペンション搭載モデルも市販化すると期待しています。

DCT

機能名:DCT
正式名称:デュアル・クラッチ・トランスミッション(Dual Clutch Transmission)

DCTはクラッチ不要で自動変速するオートマチックミッションです。車に広く採用されていて、フェラーリやポルシェ、ランボルギーニ、アウディ、ベンツなど外車の普及率が高いです。国産では日産GT-R(R35)、三菱ランサー・エボリューションXに採用されています。

バイクではホンダが唯一実用化していて、2010年発売のVFR1200Xから始まり、NC700シリーズ、CTX700シリーズ、CRF1000Lアフリカツインに搭載グレードを用意しています。

DCTはメインシャフトを二重構造にして、片方で1.3.5速、もう片方で2.4.6速を受け持つ構造です。常に次のミッションの準備をしていて、1速でスタートした時点でもう片方のメインシャフトは2速を準備して、ほぼ変速ショックなしにギアチェンジを自動で行います。

さらに加速すると2速で走りながらもう片方のメインシャフトは3速を用意し、交互に次のミッションの用意をすることでロスなくシフトアップできます。減速時も同様に下のギアを用意して対応します。

マニュアルシフトよりもスムーズなシフトチェンジを行い、クラッチとペダルによる変速操作は不要になるので、市街地でもストレスなく走れます。オートマのミッションバイクではスクーターで採用しているベルト式のCVTもありますが、ギア操作を自動変速することでスポーティーな走りを両立できます。

車でよくある4AT、5ATなど通常のメインシャフトひとつのオートマだと、バイクでは意図しない変速ショックが大きなストレスになります。大排気量のバイクはCVTと通常のオートマミッションの相性は悪いですが、DCTはスポーツ性能を犠牲にせずにオートマ操作を可能にしたホンダ独自の技術です

構造上エンストも起こさないため、大型オフロードバイクのアフリカツインは、タフなオフロードから市街地まで快適にこなせると評価されて世界中でヒットしています。

ホンダ・ライディング・アシスト


*写真は東京モーターショーに出品されたRIDDING ASSIST e

機能名:ライディング・アシスト
正式名称:HONDA RIDDING ASSIST 

停止時や低速時の自立制御を行う次世代の電子制御技術です。停止してスタンドを上げている2輪バイクの上に人が乗って、バランスを保つパフォーマンスを行い東京モーターショーでも大きな話題になりました。ライディングアシストは以下の3つ電子制御技術を使っています。

・ステアバイワイヤ ・・・ ワイヤーを使わずステアリング(タイヤ)の切れ角操作と検出を行う
・ステアリングモーター・・・ モーターの動力を使ってステアリング操作をサポート
・バリアブルスラントアングルシステム ・・・ 可変キャスター角システム

ライディングアシストの仕組みはハンドルの切れ角、タイヤの角度、キャスター角を検出しモーターの力で、停止時や低速時に常に自立させようと電子制御します。ライディングアシストは時速0〜3kmのみ作動し、発進すると自動的にオフ状態になってバイク本来の乗り味も両立しています。

バイクでよくある立ちゴケは、停止して足を着く時やバイクを手で押して向きを変える時に起こりやすいです。絶対に転ばないシステムではないですが、立ちゴケリスクを大幅に軽減します。未来的な新機能と思われるかもしれないですが、近い将来実用化される可能性もある完成度の高い新機構です。

コンセプトモデルはNC700をベースにしていますが、モーターによるアシストなのでヘビー級の大型バイクに使えるかは疑問です。構造的には車両重量の軽い250ccや400ccクラスで先に実用化されるかもしれません。

おわりに

私はお台場で行われたホンダドリーム試乗会にて、電子制御搭載バイク(CBR1000RR-SP)とDCT車(アフリカツイン)に乗ったことがあります。試乗会のコースでは電子制御サスペンションの恩恵までは実感できなかったですが、サーキット走行やワインディングを通じて体重移動やトラクションのかけ方の大切さを身に染みて感じています。

左右の体重移動は直感で簡単にできますが、前後タイヤへの荷重のかけ方は難しくて乗り方が悪いと転倒に直結しやすいです。DCTは初めて運転したのが、車高の高いアフリカツインだったので怖くて不思議な感じでした。

本来、大きなバイクを低速で走らせる時は半クラッチを使いますが、DCT車はクラッチがありません。それでもエンストはしないのでアクセル操作だけで安定して徐行をできました。加速時のギアチェンジもスムーズで慣れれば面白くて快適だと思います。

ホンダ・ライディング・アシストは初心者や女性、小柄な人には画期的な新技術だと思います。私も初めて買ったバイクのCB400SFでは立ちゴケをした経験を持っています。電子制御サスの普及やライディングアシストの実用化など、バイクの電子制御テクノロジーの進化と普及はまだまだ伸びシロがありそうです。

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