バイク電子制御テクノロジーの仕組み〜基本構造、アクセルワーク編〜

最新モデルのバイクは電子制御の進化が進んでいます。かつては大型バイクのみに搭載されていたABSは125ccクラスにも導入されるようになって、装置の小型化と低価格化も進んでいます。上級車種を見ると、エンジンやサスペンションなど幅広く電子制御を導入しています。

バイク向け電子制御技術の特徴と機能詳細をまとめました。

スポーツバイク以外にも採用されるABSやIMU、トラクションコントロール、スロットルバイワイヤなど、電子制御の基本構造とアクセルワーク系の応用技術について紹介しています。

上位車種にのみ採用されている電子制御サスペンション、ホンダの独自技術でもあるDCTと、コンセプトモデルに搭載している転ばないバイクのホンダ・ライディングアシストについては、コチラのページをご覧ください。
電子制御の仕組み応用編

ABS

機能名:ABS
正式名称:アンチロック・ブレーキシステム(Anti-lock Brake System)

急制動時のブレーキロックを抑制し、制動距離の短縮と安定性の向上効果を得られます。ABSユニットはブレーキフルードの油圧制御を行うポンプを取り付けていて、急ブレーキでは自動でポンピングブレーキを行ってくれます。ブレーキを強く握っていて、ガクガクとした挙動をした時はABSの作動している証拠です。

ABSユニットは小型化が進み、最新モデルではABS有無によるバイクの重量差はほとんどなくなり、小排気量のバイクへの採用も増えています。

一般的なABSでは、全後輪の回転センサーの情報をECU(コンピューター)で検出してブレーキポンプの制御を行います。上位モデルのABSは電子制御式コンパイドABSと呼ばれ、ブレーキをかけるとECUが全後輪それぞれの最適な制動力を演算し、パワーユニット内のモーターによって油圧を発生させてキャリパーを作動させます。

さらにタイヤがロックするとブレーキ入力も自動でコントロールされて、ライダーのブレーキレバーを握る強さとは無関係に最適なブレーキをかけてくれます。つまり、電子制御式コンパイドABSはポンピングブレーキの応用だけではなく、自動演算によって算出された最適なブレーキを自動的にかけてくれるため、ポンピングもあまりしません。

また、最新モデルではIMUと連動して、加減速やサスの加重なども考慮した作動を行っています。

IMU

機能名:IMU
正式名称:イナーシャル・メージャーメントユニット(inertial measurement unit)

IMUは和訳すると「慣性計測装置」とバイクの動きを検出するための装置です。IMUは単体ではなく、ABSやトラクションコントロール、サスペンションなど他の電子制御技術と連動させるものです。バイクの車体による動きは以下の3種類があります。

・ピッチ(左右方向の軸を中心に回転)
・ロール(前後方向の軸を中心に回転)
・ヨー(上下方向の軸を中心に回転

IMUは、2011年にアプリリアの「RSV4RS APEC」で初めて実用化されて、その後は幅広いメーカーに普及していきました。当初はポッシュ製の5軸タイプのIMUが主流でしたが、2015年モデルのYZF-R1より、初めて6軸モデル(村田製作所製)を採用されて、2017年モデルよりポッシュ製も6軸タイプのIMUに変更されています。

■5軸タイプのIMU
:ロール角度、ヨー角度、ピッチ加速度、ロール加速度、ヨーの加速度、ピッチ角度は数値から演算

■6軸タイプのIMU
:ピッチ、ロール、ヨーの3つ全て角度と加速度を検出

IMUの登場によって、バンク角によるABS、トラクションコントロール、ウィリーコントロール、セミアクティブサスの制御を可能にしました。IMU搭載のABSは「コーナリングABS」とも呼ばれています。

スロットル・バイ・ワイヤ

機能名:スロットル・バイ・ワイヤ/フライ・バイ・ワイヤ/ライド・バイ・ワイヤ/YCC-T(ヤマハ電子制御スロットル)
正式名称:スロットル・バイ・ワイヤ(Throttle By Wire)

メーカーによって複数の呼び方がありますが、構造は全て同じでスロットル・バイ・ワイヤに分類されます。従来のバイクはアクセルケーブルを介して、スロットル操作の力をエンジンに伝えていました。スロットル・バイ・ワイヤはスロットルとエンジンを機械的なケーブルで繋いでいません。

スロットル・バイ・ワイヤは、スロットル操作を電子信号に変換してECU(エンジンコントロールユニット)に伝達し、ECUの決めた指示に従って、モーターがスロットルバブルを開閉しています。一部の車種では従来のアクセル操作感を維持するために、ケーブルを残しているものもありますが、構造的にはケーブルは必要としません。

ケーブルの一切ないタイプは「フルライダ・バイ・ワイヤ」と区別しているメーカーもあります。急発進の操作を電子制御で抑制することによって、スリップリスクを軽減し燃費も向上した乗り方を可能にしています。スロットル・バイ・ワイヤを採用している車種の多くは、ライディングモード機能を搭載しています。

ライディングモード(Riding Mode)

スロットル・バイ・ワイヤの電子制御技術を応用して、メーカーにより設定されたライディングモードを選択できる機能です。一般的にはハンドルにライディングモード変更スイッチを設置し、手元の操作でスポーティーな走りに最適な「スポーツモード」や、急アクセルを抑制する「エコモード」や「レインモード」などを選択できます。

各メーカーや車種によってライディングモードの種類は異なり、3〜4種類のモード選択をできる車種が多いです。

■主なライディングモード
スポーツ:バイクの性能をフルに発揮できるアクティブモード
スタンダート/コンフォート:平均的なライディングを行う標準モード
エコ:燃費走行重視
レイン:路面状態が悪くてもスリップのしにくい丁寧なアクセル操作を行う
ツアラー/クルーズ:加速はしっかりするけど高速巡航時の回転数は抑える

最新の高級バイクでは、幅広いパーツを電子制御で抑制しているので、ライディングモードでスロットルバルブ以外の電子制御と連動させているものもあります。たとえばBMWのGS1200の場合、エンデューロ・プロモードを設定すると中低速トルクを強化し、リアのABSをカットオフされます。

次に紹介するパワーモードと似ていますが、ライディングモードはスロットルバルブの開閉のみを電子制御化するシンプルな構造です。

パワーモード(PowerMode)

2007年モデルのスズキ・GSX-R1000で初めて採用された新しい電子制御技術です。現在はカワサキのZX-10Rやホンダ・CBR1000RR、BMW・S1000RRなど、リッタークラススーパースポーツや隼などメガクルーザーを中心に採用されています。

ライディングモードではスロットルバルブの開閉のみを操作するのに対して、パワーモードは以下のエンジン特性を制御します。

・点火タイミング
・燃料噴射量
・サブスロットルバルブ開度
・排気バルブの開度

つまり、本来はコンピューターを繋いで行うインジェクションの設定を、ハンドルのスイッチ操作で変更できる機能です。モードによっては最高出力を落としてソフトな乗り味にすることで、扱いにくいハイパワーマシンを幅広いレベルのライダーが手軽に乗れるようになりました。

最近ではIMUを介してトラクションコントロールやABS、セミアクティブサスと連携を取るタイプが増えています。

エンジンブレーキコントロール

名前の通り、アクセルを戻した時に起こるエンジンブレーキの効き具合を電子制御で調整します。エンジンの回転数やギアと速度域に合わせて、スロットルを全部戻してもスロットルを僅かに開けている状態にします。エンジンブレーキコントロールは複数のモードを選ぶことができて、エンジンブレーキの強弱を調整します。

エンジンブレーキを電子制御しなくても、アシスト・スリッパークラッチで対処できます。エンジンブレーキコントロールは、リッタークラススーパースポーツなど、ハイパワーマシンにのみ採用されていて、エンジンブレーキの効き方を調整できるため、コースによって最適な効き具合に設定できます。

なお、アシストスリッパークラッチとは、250ccクラスまで幅広く採用されて、電子制御は使わずクラッチハウジングとクラッチセンターを斜めに噛み合せた構造です。エンジンブレーキでバックトルクがかかると、半クラッチ状態になってエンジンブレーキを軽減する構造です。

斜めに噛み合っていることから、クラッチを繋いだり加速させようとするとクラッチセンターを引き込み力が働きます。構造上、クラッチレバー操作の負荷が少なくて済むため、ソフトなクラッチスプリングで対処でき、クラッチレバー操作を軽くなるメリットもあります。

ウィリー・コントロール(Wheelie Control)

スポーツバイクは軽量化とハイパワー化が進み、発進時はもちろん、3速や4速でも簡単にウィリー(前輪が浮く)させるパワーを持っています。レースにおいて加速したい時に意に反してウィリーすると、タイヤが地面に設置するまでアクセルを戻さなければならず、大きなロスになります。

ウィリーコントロールでは、前後タイヤの回転差、サスペンションの伸びによるウィリーしやすい状況をIMUより分析して、ウィリーする出力を予測して点火タイミングやスロットルバルブの開閉を制御します。最近ではウィリーだけを抑制するのではなく、危険のない範囲内で限界まで加速をコントロールできるタイプや、モード選択できるタイプも増えています。

ローンチ・コントロール(Launch Control)

ローンチ・コントロールは最適な加速をサポートするもので、ウィリーコントロールと似ています。発進時に急加速しようとするとクラッチを速く繋ぐ必要がありますが、パワーのあるバイクだとウィリーやホイールスピンを起こすリスクがあります。

ローンチ・コントロールの構造はIMUやトラクションコントロールと連動し、一定の速度に達するかシフトアップをするまではスロットルやエンジンパワーを抑制します。ウィリーコントロールは走行中のウィリーも抑制、ローンチコントロールは発進や低速域からの加速に限定したものです。

クイックシフト(オートシフター)

「クイックシフト(QUICK SHIFT)」や「オートシフター(AUTO SHIFTER)」は、ミッションバイクをクラッチ操作不要でシフトチェンジできる機能です。バイクレースでは、シフトチェンジ時にクラッチを握らずにスロットルを少し戻してシフト操作を行います。

バイクのミッションは構造的にクラッチを握らなくても、スロットルを一瞬戻すだけでギアボックスにダメージを与えずにシフトチェンジできます。クイックシフトやオートシフトは、一瞬スロットルを戻す作業を自動で行ってくれるものです。

フルスロットルのままシフトチェンジをするとセンサーが感知して一時的に点火をカットしてスロットルを戻すのと同じ状況を作ります。クイックシフトとオートシフトは名称が違うだけで仕組みは同じです。一般的なものはシフトアップのみ対応していますが、最新モデルではシフトアップとシフトダウンの双方に対応するものも出ています。

加速時にはクラッチを握ったり、スロットルを戻すことで生じるロスを最低限に抑え、減速時はクラッチ操作を不要にすることで減速後のコーナリングに集中できるメリットがあります。

トラクション・コントロール(TCS)

機能名:TCS
正式名称:トラクション・コントロール・システム(TRaction Control System)

トラクションコントロールはタイヤの空転を制御するものです。初めて登場したトラクションコントロール採用車は、1997年モデルのヤマハ・ランツァでした。当初はタイヤとエンジンの回転数を監視する簡易的なタイプであまり普及しませんでした。

簡易的なトラクションコントロールは、空転を感知してから遅れて電子制御で抑制するもので、ある程度は空転を容認できる一部のオフロードバイクのみ採用されていました。

2000年代に入るとインジェクション化とABSが普及します。そこにライド・バイ・ワイヤとIMUを組み合わせて連携を取ることで、タイヤの回転数、エンジン出力、バルブ開閉など幅広い項目を検出し、電子制御によって空転を起こさないアクセルバルブの開閉を行い抑制しています。

現在は、シンプルな構造で滑らかな発進や加速を制御する簡易的なタイプと、IMUと連動して空転を抑えつつタイヤへの動力負荷を最適化して速く走るサポートをする2種類があります。トラクションコントロール採用車はIMUとの連携があるかを確認しておきましょう。

おわりに

90年代後半から2000年代前半のABS搭載バイクが出始めた当初は、バイクにはABSは普及しないだろうと思っていました。しかし、ABSはコンピューターのシステムやユニットの小型・軽量化など進化を遂げて、現在ではバイクの必需装備に近い存在まで普及しています。近い将来は250ccクラスくらいまではABSは標準装備が当たり前になるでしょう。

小型化と低コスト化が進んでいけば、トラクションコントロールやスロットル・バイ・ワイヤなど、幅広い電子制御テクノロジーが普及していきます。機能によっては非力なバイクへの必要性は低いものもありますが、バイクを快適で安全に乗るためには電子制御技術は必要不可欠な存在です。

2017年以降に新発売やフルモデルチェンジした車種であれば電子制御は充実していますが、中古バイクを買う時は電子制御の有無も判断材料にしてみてください。特に大型のハイパワーマシンは電子制御の有無で扱いやすさは大きく変わります。

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