バイクの車検項目と検査手順

ユーザー車検を利用する方はもちろん、業者に車検を依頼するときも、車検項目を理解しておくと、車検のために必要な整備内容を把握する事ができます。

バイクの車検項目や適合基準については細かい規則によって定められていますが、ここではバイクの車検が通らないよくある事例を交えて、分かりやすく解説します。

バイクの車検項目と検査ライン

バイクの車検は検査ラインを通して継続検査を行います。
検査ラインでは、検査項目ごとに必要な設備が並んでいて、1つずつチェックを受けて前に進んでいきます。

バイクの車検項目と検査ラインの流れはおおむね次の通りです。

  1. 受付、車検証記載情報との相違の確認、外観確認
  2. 灯火類の検査
  3. 排ガス、騒音検査
  4. スピードメーターチェック
  5. ブレーキ制動力チェック
  6. ヘッドライト光軸チェック

車検の検査項目でもっとも落ちやすいのはヘッドライトの光軸調整で、全国どこの車検場でもヘッドライトの光軸検査が最後の検査項目になっています。

車検に通すためのポイントと合わせて、検査項目を詳しく解説します。

受付、車検証記載情報との相違の確認、外観確認

検査ラインの入口で必要書類を渡すと、検査員が登録情報の内容とバイクの状態をチェックします。

検査員は毎日数十台の継続検査を行っているプロです。バイクを一目見て、登録情報との相違の可能性があるか瞬時に判断します。

ハンドルの改造やフレームの切断など、寸法が変わっている可能性がある場合は、メジャーを使用して外寸の測定を行います。

車検証情報と寸法や排気量、エンジンの車体番号や型式が違う場合は、原則改造申請を行うように指示されます。アップハンドルなど、軽微な寸法の違いであれば、車検証情報の変更をその場で対応してくれる場合もあります。

続いて、バイクの保安基準適合情報をチェックします。
タイヤの残り溝や、ウインカー、反射板の装着の有無、乗車定員が2人のバイクは、タンデム用のステップやシートに捕まるヒモが付いているかなどをチェックします。

外観確認で検査に落ちる事例

・タイヤの残り溝が1.6mm以下(スリップサインが出ている)
・タイヤのヒビ割れが著しく激しい
・ミラーが片側しか付いていない
・フェンダーレスキットにするなどして、反射板が付いていない
・純正よりも大きく寸法が変わるアップハンドルや改造をして、改造申請を行っていない
・タンデム用ステップを外したままなど、2人乗りに必要な装備が足りない
・オイル漏れを起こしている
・ミラーのステーが転倒で折れたままなど、各部品が正しく固定されていない

タイヤの状態に不安がある場合は、車検を受ける前に新品に交換しておきましょう。
車検の検査項目ではタイヤのひび割れに関する規定がありません。若干のひび割れ程度であれば見逃してもらえますが、状態が著しく悪く検査員に危険と判断されると、残り溝があってひび割れを理由に車検に落とされるケースがあります。

その他、ノーマル状態で付いているミラーや反射板を、必ず装着しておくようにしましょう。
オイル漏れや、部品が固定されていないなど、目に見える不具合も当然車検には通りません。

灯火類の検査

灯火類の検査は、ヘッドライト、ブレーキランプ、ウインカー、ホーンが正常に作動するか点検します。

検査方法は、まずはバイクにまたがり、エンジンをかけます。その後検査員が「ウインカー左、右、ブレーキ」などと指示を出しくれるので、指示に従って灯火類を作動させます。

正常に動いているかはもちろん、違法改造されていないかもチェックされます。

灯火類の検査に落ちる事例

・8,000ケルビン以上のHIDヘッドライトに改造している
・ハイフラキットやワット数などの変更でウインカーの点滅速度が正常ではない
・電球切れなど、灯火類が正常に作動しない
・ホーンが鳴らない、もしくは違法改造のホーンに変更している
・貼り付け式ウインカーなど、視認性に問題がある

灯火類の点検は日常点検でも行う項目です。電球切れなど、イージーミスで検査に落ちる事がないようにしましょう。

カスタムで人気のHIDヘッドライトはケルビン数が高くなるほど、ライトの色が青くなります。8,000ケルビン以上は保安基準不適合になります。

スポーツバイクでカウルに貼り付け式(埋め込み式)のウインカーにしている場合は、貼り付け位置の角度が悪いと車検に通りません。

貼り付けウインカーの場合は、ステーなど厚みがある物を噛ませて、正面と後方から見やすいように角度調整すると車検に通りやすくなります。

排ガス、騒音検査

検査ライン入口での外観や灯火類の検査が終わると、排ガス、騒音規制の検査機器がある場所まで移動します。

排ガス検査はマフラーの吹き出し口付近に専用の機械を当てて、適正値が点検します。
騒音規制も同様にマフラーの吹き出し口付近に測定器を設定して、エンジンの回転数を上げるなどして音量(デシベル数)を測定します。

検査員によっては、ノーマルマフラーで排気漏れ等がない状態であれば、排ガス、騒音検査を省略してくれるケースもあります。社外マフラーに変わっている場合は、騒音規制の検査は必ず行われます。

排ガス、騒音検査に落ちる事例

・違法マフラーによる騒音規制不適合
・社外マフラーのウールの消耗によって、排ガス規制や騒音規制にひっかかる
・マフラーの穴や取り付け不良などによる排気漏れ

車検では、ノーマルマフラーが正常に取り付けてあれば、排ガス、騒音検査に落ちる事はほとんどありません。

社外マフラーの場合は公道使用不可の違法マフラーにしている場合はもちろん、車検対応の社外品でもサイレンサーのなかのウールが摩耗していると、排ガス規制や騒音規制にひっかかる場合があります。

不安があればマフラー交換をするか、ウールの交換を行い排ガス、騒音対策を事前に講じておきましょう。

スピードメーターチェック

スピードメーターのチェックは、検査ライン上にあるローラーの上に前輪を載せます。その後、自動的にローラーが回って前輪を回転させます。

バイクのスピードメーターは前輪の回転数で計測しているので、バイクが動かなくてもタイヤがローラー上で回る事でスピードメーターが上がっていきます。

スピードメーターが40kmを指した時にブレーキを握るか専用のボタンを押します。ローラーの回転速度で算出した時速とスピードメーターの時速に大きな相違がなければ検査は合格です。

スピードメーターチェックに落ちる事例

・前輪のホイールの大きさ変更を伴う改造
・スピードメーターケーブルの接触不良などによる不具合

アメリカンバイクなど、タイヤのインチ数を大きく変更するカスタムをして、純正用のスピードメーターケーブルを使用すると、実際の速度とメーターの速度が変わってしまいます。

スピードメーターケーブルは前輪のみついているので、ストリートバイクなどで流行している後輪を大きくするカスタムはスピードメーターチェックに影響はありません。

スピードメーターは車検項目の中では、落ちる事例が少ないです。普段、バイクに乗っていて、スピードメーターが正常に動いている場合は何も対策を取らなくて問題ありません。

接触不良の不具合があれば、直してからでないと車検に通りません。

ブレーキ制動力チェック

ブレーキ制動力チェックは、スピードメーターの検査で使うローラーをそのまま使用します。

まずはスピードメーターのチェックで利用した前輪をローラーで回し始めます。検査員がブレーキレバーを握るように指示するので、勢いよくブレーキを握ります。

ブレーキを握ると、タイヤの回転が止まり、その力でローラーの回転も止まる事でブレーキが正常に作動しているか確認します。

前輪のブレーキ検査が終わったら、続いて後輪をローラーの上に乗せて同様の制動力検査を行います。

ブレーキ制動力チェックに落ちる事例

・ブレーキの効きが悪い
・ブレーキパットの残りがない

ブレーキは普段乗っていて不具合を感じなければ車検で落ちる事はほとんどありません。

ブレーキは効くけど、キーキーブレーキ鳴きの音がすると、ブレーキパットの残量をチェックされて、危険と判断される状態だと車検に通らない場合があります。

ヘッドライト光軸チェック

車検検査の最後の項目はヘッドライト光軸チェックです。
バイクを所定の位置に置いて、バイクにまたがって水平な状態にしてエンジンをかけてヘッドライトをロービームに設定します。

以前はハイビームでヘッドライトの光軸チェックをしていましたが、2015年9月よりロービームで行うように変更されました。

光軸検査の機械にヘッドライトを当てる事で光軸と光量を検査します。光軸の縦と横のそれぞれの角度、光量が正常であれば車検検査完了です。

光量が足りなくなる事を防ぐために、若干エンジンの回転数を上げると電圧が上がってライトの光量が増えます。

光軸チェックが不適合になると、検査員からどの方向に光軸を調整すればいいか教えてくれます。光軸検査に落ちたら、一度検査ラインを出て光軸調整を行ってから再度検査ラインの入口に行きます。

再検査は不適合箇所のみ行うので、すぐに光軸検査の機械の前まで案内されて再度検査を行います。

現在、車検の光軸検査は1日3回までと制限があり、万一3回とも不適合になると翌日以降に再度検査を受ける必要が出てきます。

ヘッドライトの光軸は予備検査場で調整してもらう

ヘッドライトの光軸は昔は回数制限がなかったため、検査に適合するまで何度も調整を繰り返す事ができました。

現在は1日3回までに検査回数が制限されたため、予備検査場で調整してもらう需要が高まっています。予備検査場は陸運支局の周辺に複数あるものです。

予備検査場によっては、一般客の受入やヘッドライトのみの調整に対応してくれない場合もあります。ユーザー車検を利用する時は、事前に予備検査場の情報を調べておくとよいでしょう。

まとめ

私がはじめてユーザー車検で、検査ラインを通した時は、素人が何も知識がない中で行くと検査員に嫌がられるのではないかと懸念していました。

しかし、バイクはユーザー車検を利用する方が多く、検査員も素人への扱いが手馴れていました。
検査レーンの入口でオドオドしていると、検査員が優しく検査手順を案内してくれました。

最後の光軸検査のみ一発で通りませんでしたが、一発で通らない事を当たり前のようにしていて、「もう少し左上に調整してきて」と指示をしてくれました。

素人のユーザー車検に対して検査員は嫌がらせをする事もなく、特別扱いや見逃す事も一切ありません。私の経験上は、検査員は思っていた以上に態度がよくて好感できました。

ユーザー車検に興味がある方は、是非積極的に挑戦してみてください。

ただし、バイクは車検検査に通れば安全に乗れる事が保証される訳ではありません。
車検項目にはない、各種オイル交換やプラグ、エアフィルター、バッテリーなどの消耗品のメンテナンスも車検の際に見直すようにしましょう。

車検でよく落ちる事例に思い当たる事や不安を感じる事があれば、事前にしっかり整備・調整を行っておきましょう。

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